常世国往還記

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お山の大将

2004/08/12(木) 23:51:21





クライマーズ・ハイ(book)
横山秀夫著 文芸春秋 2003年
御巣鷹山に日航機が墜落!(なんと偶然にも19年前の今日のことです)
地方紙のベテラン記者悠木は急遽全権デスクに指名され、登山仲間とかねてから約束していた衝立岩登山をあきらめなくてはならなかった。
錯綜する情報、混乱する社内。突然降ってわいた10年ぶりの大事件に色めき立つ記者たち。手柄争い、足の引っ張り合い、職場による認識の違いなど、さまざまな人間模様の中で翻弄される悠木。そのさなかに、登山のパートナーである安西が倒れたとの知らせが飛び込む。


影の季節」など短篇のシリーズが、文春ウェブ文庫から一話105円で配布されています。
この作家がどういうものを書いているか、とりあえずちょっと読んでみるにはよろしいかと思います。






「影の季節」は警察が舞台の推理ものですが、主人公は皆総務そのほかの内勤の人々。刑事物ではないので、当然、彼らの身辺に起きる、超ドメスティックな事件を取り上げることになります。事件といっても、ご本人たちにはおおごとでも、関係者以外にとってはどうでもいいような瑣末な出来事です。その中で右往左往する主人公たちに、嫉妬、誹謗、中傷、足の引っ張り合いなど、サラリーマン社会にありがちなマイナスの人間関係が、これでもかというほどからんでくる、まことに気のめいる作品群です。

でも、短篇ですから。
スケールが小さくなるのは、ある程度仕方ないことですよね。
なんたって、タイトルが「クライマーズ・ハイ」ですもの。それにこっちは長編だし。新田次郎の登山小説みたいに、別世界の空気を感じさせてくれるかも。
読む前からカテゴリを"この世の果て"と決め込んでいたわたくしでしたが……。



違いました。

単なる「影の季節」拡大版です。
舞台が新聞社、主人公はデスク、現実に起こった事故、ミステリのかけらさえ見当たらないのも、本格推理小説を期待した私にはショックでしたが、そればかりか、みにくい人間関係が「影の季節」以上にてんこもりです。
そして、主人公も含め全員が、仕事の本質を取り違えているのは、「影の季節」と全くおなじです。

ペンは剣よりも強し、ならば、ペンを揮うにも、刃物ほど慎重であってもらいたいものです。最近の新聞記事にはやたらと感情的な文章が多く、修飾(粉飾?)の中から事実そのものを拾い出すのに苦労することがあります。
「誰よりも早く、誰よりもセンセーショナルに」それは、新聞を売るためには大切なことでも、記事にとって肝心なことではありません。読者が新聞を読むのは、まず第一に正確な情報を知るためです。(早さから言えば、他紙がどうこう以前に、TVやインターネットにかなうはずがないでしょう。日航事故当時既に、早さは新聞の「売り」になっていないのに、習慣的にこだわるところがトホホ)
凄惨な事故現場にショックを受けるのは人間として当たり前です。でも、それをそのまま記事にぶつけられても困るのです。損傷した遺体をこれでもかと見せ付けるのも書くのも、常識的に考えて、死者の尊厳を無視した無神経な行いですし、報道への情熱とは別種のものです。新聞記事は記者の感想文集であってはならないと思います。そういうものが書きたければ、個人でブログでも出してください。

事件について考えるのは読者です。記者個人の価値観をできるだけ排し、可能な限り情報提供に徹してもらいたいものです。現場を見たからといって、自分の視点がすべてだと考えるのは、一種の思い上がりではないでしょうか。
もちろん、個人の視点を完全に排除することは不可能です。人間が書いた文章である以上、どんなにがんばっても事実に多少のバイアスがかかることは避けられません(一見現場をそのまま写し出しているような写真にすら言えることです。「破線のマリス」はまさにその点を突いた話でしたね)。だからこそ、一層慎重であることが求められるのです。


悠木にしろ、けちな権力争いの道具にされた安西にしろ、混乱の中で「大きな山に登る」ことだけに捉われてしまった状態を「クライマーズ・ハイ」に喩えているわけですが、「降りるために登る」という結論あるいは結末も、とてもじゃないが納得できません。降りればいいってもんじゃない、というか、主人公の悠木はラストで降りたつもりでしょうが、実は全然降りていません。

彼に問題の本質がわかっていない以上、スケールを小さくしただけで、おなじことの繰り返しです。
記事が小さい分、罪は軽いかもしれませんが、「おれだけが知っている」「おれが知らせてやる」的な尊大な態度に変わりはないでしょう。










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『「クライマーズ・ハイ」横山秀夫』
タイトル:クライマーズ・ハイ著者  :横山秀夫出版社 :文藝春秋読書期間:2004/11/22 - 2004/11/25お勧め度:★★★★★[ Amazon | bk1 ]+++++北関東新聞の古参記者、悠木和雄は、同僚の元クライマー、安西に誘われ、谷川岳に屹立する衝立岩に挑む予定
AOCHAN-Blog|2004/12/02(木) 12:18
『横山秀夫:「クライマーズ・ハイ」』
クライマーズ・ハイ横山秀夫著出版社 文芸春秋発売日 2003.08価格  ¥ 1,650(¥ 1,571)ISBN  4163220909bk1で詳しく見る りょーち的おすすめ度: 泣かせどころを分かっている作家だな。横山秀夫。 クライマーズ・ハイを読んでそう思った。すごいイイ作品なんだ.
りょーちの駄文と書評とアフィリエイト|2004/12/27(月) 18:40

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