常世国往還記

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それは無理だって

2004/08/03(火) 00:22:36

少年A 矯正2500日全記録

少年A 矯正2500日全記録(book)
草薙厚子著 文芸春秋 2004年
ちょっと騙された。
「著者は元法務教官」というふれこみを見て、内部報告のような内容を期待したのですが、この著者はほとんどただのマスメディアの人ですね。
事件の記述は発生当時さんざん報道されたものそのまま、見方も平板で、特に目新しいことは書かれていません。
流行の論調にそのまま乗っかっただけの文章の羅列、ソースのはっきりしない「学説」を、あたかも定説であるかのように言いなし、特に著者自身の見解を披瀝した、序章~第二章と終章にこの傾向が強く、読んでいてイライラしました。

「この事件を風化させてはいけない」とは、どういう意味なんでしょうか。
どこでもいつでも起こりかねない類の事件だから気をつけろということなのかな。
関係者のインタビューからも、精神科医の意見からも、この事件の特殊性が浮かび上がるばかりで、それほど普遍的な部分があるとはどうしても思えないのですが。




第三章(精神寮)~第六章(贖罪)が、関係者のインタビューによるオリジナル。ここは、著者の教官経験も手伝って、さすがにしっかりしています。関係者の話が中心で、著者本人の意見をあまりさしはさまないところが良かった。

それにしても、このお母さんがそんなに悪いんですかねえ。著者の切り取り方のせいかもしれませんが、出てくる人出てくる人「母親に問題あり」の大合唱です。
でも、しつけが厳しいと言ったって、怪我するほど殴ったわけじゃなし、お母さんに変質的なところは微塵もありません。
きちんと食べさせて、体も衣類も清潔にして、身体的には健康に成長しているんだから、平凡な人間に、親としてこれ以上を求めるのは酷じゃないでしょうか。

年子で下が生まれ、そのあと三人目が出来て、全部男の子とくれば、そりゃお母さんはてんてこまいです。上に早くしっかりしてもらいたいと思うのは当たり前です。可愛がる可愛がらないの問題ではありません。物理的にそうせざるを得ないのです。
うちだってそうでした。

おばあちゃんは 「そんなに怒らなくたって。かわいそうに」 と言いました。おばあちゃんは、みんなそう言うんです、孫には責任がないから。昔は自分だって我が子を鬼のように怒って、姑や自分の親から同じことを言われたのですが、すっかり忘れちゃっているんですね。
で、言葉が遅かったり、オムツはずしが遅れたり、いつまでも抱っこをせがんだり、ベビーカーに乗りたがるのを 「親がだらしないから」 と、真っ先に批判するのもおばあちゃん。そんなものです(笑)。
だから、少年を叱責する母親をたしなめたからって、おばあちゃんを 「癒し系」 の善玉に仕立てるのもどんなものでしょうか。

このお母さんは、孤軍奮闘、むしろよくやっておられたと思います。
普通はこれで充分のはずです。普通の子なら。そうでなかったから大変なことになってしまったのです。

たまたま精神的に一種の障害のある子を授かり、その育て方に失敗したからといって、すべて母親の責任なのでしょうか。では、どこのどんな人なら失敗無く育てられたのでしょう。たとえば私には、こういう子供を一人で正常に育てる自信なんて、全くありません。

院内の教官たちは非常に立派だと思いますが、彼らはプロで病的性格の矯正について専門知識と経験を持っていますし、何よりAの特殊性を理解した上で、いわば後出しの状態で彼を育てているのです。それだって、これだけの問題行動を起こした子が相手では、たいへんなのは分かりますが、日々成長し変化する子供を手探りで育てている素人の母親とは、立場が全く違います。

専業主婦のお母さんは、おむつを替えて、食べさせて、着せて、言葉やごあいさつや、いろんなことを手取り足取り教えて、熱が出たら看病して、子供に関することは何でもぜ~んぶ一人で苦労して、なのに一旦問題が起これば、すべて 「母親が悪い」。
なんだか母親業って、割に合いませんね。少子化が進むのも無理はありません。

私が問題じゃないかと思うのは、どちらかというとお父さんのほうです。

少年の話に、お父さんはほとんど登場しません。父親だって同じ親なのに、そこが変。
お父さんについては少年自身も含めて皆さん 「おとなしい、いい人」 という評価のようですが、「いい人」 であるというのは、少年の心理の中では存在感が極端に薄く、逆に父親の側から見れば、少年とほとんど関わっていない、つまり、母と息子の大混乱状態から逃げていたということではないのでしょうか。さもなければ 「無関心」 を意味するのではないかと思います。

少年が万引き事件を起こしたとき、父親が強く叱ったら非常に反応した (おびえた) というくだりがあります。父親の叱責にはそれだけ効き目があったのです。その後も非行は続いているのに、どうしてこれきり叱るのをやめてしまったのでしょうか。一貫性のないしつけは最悪なのに。

だいたい、思春期に入ったら、年長者への反抗と異性に対する過剰反応の相乗効果で、男の子は母親の言うことなんか半分も聞いていません。無視を覚悟で必要量の3倍くらい言って、やっとちょっぴり頭に入るのが関の山です。速攻かつ本気で叱らなくてはいけない場面になったら、男親に体を張ってもらうほかありません。

うちも一度だけ張ってもらったことがあります。いつもは 「お母さん、うるさすぎ」 などと、子どもの味方ばかりして、損な憎まれ役は母。でも、そのときだけは本気で怒ってました。たった一発でしたが手も出ました。
子どものほうは、痛いより驚いたみたいです。

小さな子どもへの体罰には賛成できませんが、「体は大人、頭は子ども」の思春期、腕力は既にほとんと「タメ」ですし、親子でも言っていいことと悪いことがある、ここまでやったら、親でも本気で腹を立てる等など、人間関係の「臨界値」を知る上で、直截的な効果があったようです。
まあ、こういう結果も小さい頃からの信頼関係あってこそかもしれませんけれども。

普段、あまり感情を出さないだけに、お父さんが本気になると、効果絶大です。
日ごろ家庭の外で社会人をやっているお父さんには「社会生活の権威」というイメージがありますし、特に男の子にとっては最も身近な男性モデルであるはずです。

もし、事件に至る以前に、猫の死骸にいたずらするなどの異常行動について父親がガーンと怒り、彼のうす気味悪い世界を破壊し、本気で行動を監視したら、どうだったでしょうか。母でなく父が、一緒にスポーツをしたり、勉強をみてやったり、息子の世界の再構築に取り組んでいたら。

少年の衝動が内向するだけで、かえって事態をこじらせてしまう可能性も否定できませんが、ひょっとすると、自分でも内心気にしていた自身の異常性を恥じ、ぎりぎり理性で押さえ込むうちに、やがて思春期の激しい衝動が去って、何事もなく済んだかもしれないとも思います。

ともあれ、親子関係も、人間対人間の問題です。こうすれば、ああすれば、という一元的な正答を探すほうが、どうかしているのでしょうね。

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