常世国往還記

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ネタバレ女彫刻家

2004/06/29(火) 23:06:11

主人公ロズの獅子奮迅の働きで、オリーヴの冤罪は晴れ、大団円のラスト……とはいかないのですね。調査の中心にいた人々よりむしろ、傍観者の元警官ハルが、職業的な勘てヤツでしょうか、どことなく不穏な空気を感じ取っています。

後半、読者もついロズの興奮に巻き込まれてしまいますが、冷静に見れば、オリーヴの無罪はロズが思うほど明白ではありません。
わずかながら、読者だけに示されたロズの知らないオリーヴ像には、奇妙な性癖がいくつも現れています。








牧師をごまかしてローソクを盗むこと…これ自体はそれほど大した罪ではなさそうです。しかし、このローソクを使ってやっているのは、ブードゥーの呪い人形みたいなものをこしらえ、時に本当に呪いをかけるというぞっとするような悪戯。
首の無い男性像や、赤子の首を絞める女性像は、一体何を象徴しているのか。いやその前に、グロテスクな人形を作るという行為は、惨殺した二遺体をばらばらにして組替えた猟奇的な行為と通じるものがあるのではないかと思われます。
また、検査の折にこれらの人形を膣に隠すのも異様です。

オリーヴは何時からこの薄気味の悪い遊びを始めたのでしょう。
凄惨な犯行現場を目撃したショックが原因との解釈も成り立たないわけではありませんが、しかし、犯行前にも、自分の言いなりになる妹やゲアリーという知的障害の少年を、着せ替え人形のように扱っていたとの証言から見て、これらの異常行動は、既に少女時代には始まっていたようにも思われます。

また、彼女が囚人仲間に 「あの女 (=ロズ) は利用できる」 と語るところは、さらに怪しげです。
無実の罪に苦しむ寄る辺ない女の哀しみどころか、ロズを操り、同情的な本を書かせ、センチメンタルな世論を利用して無罪を勝ち取ろうという計算高さがむきだしです。
そもそも事の始めから、彼女のほうがインタビューの主導権を握り、ロズを感情的に支配してきました。この冷静さは、ロズが作り上げようとしている悲劇的な女性像とは、どう考えても一致しないのです。

しかし、ロズは自説に反する証拠・証言に目を向けようとはしません。
オリーヴの魁偉な容貌は 「男性中心の裁判関係者の偏見を招いた」 と決め込み、美しい妹の存在は両親の偏愛、オリーヴの過食は親の無関心のせい……確たる根拠の無いステロタイプな見方に飛びつき、他の可能性について検討しようともしない。
彼女のこの弱点に関して、オリーヴの恩師であるシスターが、慧眼にも初対面で指摘しますが、ロズは 「単なる見解の相違」 と片付けてしまいます。
ロズのこのような態度は、フェミニズムへの傾倒だけでなく、彼女自身の悲惨な経験にも起因していて、同情すべき点もないわけではないのですが、それはそれとしても、偏りの無い立場をとることの難しさについて考えさせられます。

ところで、このシスター、容姿・中身ともに大変魅力的な婦人ですが、ロズより一回りも二回りもうわ手の鋭い人間観察眼を持ち、それでいて非常に包容力のある人柄にもかかわらず、愛弟子であるはずのオリーヴを 「ウソツキで狡猾」 と、にべも無く言い放ちます。「妹を可愛がっていた」 という事実と、「頭が良い」 こと以外、何一つ肯定的に評価していないのです。
ロズは例によって 「こんなにいい人でも、見た目で人を判断する悪癖から抜け出せないのね」 などと安直に裁定しますが、その後の言動から見ても、このシスターが美醜で人を差別するような狭量な人物とは到底思えません。してみると、一方的な発想に曇ったロズの目よりも、長年多くの生徒を見てきたシスターの目のほうが、ずっと確かであるように思われます。
ロズが作り上げようとしている 「愛情に飢え、自己防衛のため虚言癖のある、性格の弱い」 オリーヴ像よりも、シスターや同級生の語る 「邪悪で支配的な女」 のほうが、一連の事実の中ではどう考えてもしっくりきます。

しかし、これほどオリーヴに対して否定的で、おそらく彼女の犯行を確信しているにも関わらず、シスターは、事件直後から一貫して彼女を見放さない唯一の人物です。
それは恐らく、ロズのいびつな肩入れとは違い、「罪ある子、迷える子羊を、その迷い故に愛する」 という宗教的な発想からの行動でしょう。同様の優しさは、パニック時のロズに対しても発揮されています。

酸いも甘いも噛み分け、宗教者でありながら 「私は恋愛経験だって豊富」 と言い放つ、味のある人格者のシスターが、なぜ現世を捨てて宗教の世界に入ったのでしょうね。

物語の本筋からは外れますが、なかなか興味深いところです。


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