常世国往還記

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家族という病

2004/06/15(火) 23:00:32

洋販のベストセラーに入っていたので、あれれ、今頃どうして?と思ったら、やっぱり映画化されていたんですね(明日から公開)。
原作を読む限り、いろいろと問題の多い暗めの話ですが、映画ではどんなふうに料理されているのでしょうか。

綴り字のシーズン
マイラ・ゴールドバーグ著 / 斎藤 倫子訳
東京創元社 (2002.7)
通常24時間以内に発送します。


気の滅入る話です。家族関係ホラーと言ってもいいかもしれない。

綴り字コンテストのことは、その昔、シュルツの「スヌーピーとチャーリーブラウン」シリーズで知りました。
何度もマンガのネタに使われているところをみると、アメリカの大抵の子供にとって、かなりのストレスを伴う共通経験らしい。
日本だと、お受験なんかが同じようなシチュエーションかもしれませんね。
子供の能力に過剰期待してしまうのは、どこの国の親も同じのようです。


イライザ・ナウマンは、ユダヤ人の父とワスプの母の間で育つ小学五年生。
弁護士の母が稼ぎ手で、父親が主夫として家事をとる、ちょっと変わった家庭ではありますが、彼女自身はきわめて凡庸な少女です。
優秀な兄とは反対に、両親の期待を裏切ってばかりいる彼女に、ある日奇跡のような出来事が起こります。スペリングコンテストのクラス代表になり、続いて校内コンテストで優勝してしまったのです。

この成り行きは、読者にとってはさして意外ではありません。
作者の語るイライザの内面世界は、豊かなイメージとユーモアに彩られていて、鈍重な子供のそれには到底見えないからです。
しかし、彼女の隠れた部分に気付かない両親にとっては、青天の霹靂。
頭の良い母、信心深く勉強家の父、秀才の兄、その中でただ一人外れ者だったイライザに並外れた才能が。
しかし、この幸福な事件を機に、もともと地に足のついていなかった一家は、完全に離陸してしまいます。

イライザにとって、スペリングコンテストは、生まれて初めて真剣に集中して事に当たる、すばらしい経験でした。ちょうど思春期にさしかかろうとする時期、起こるべくして起こった正常な「目覚め」。コンテストはそのきっかけにすぎなかったのに、あまりに華々しい成功だったため、両親はこれを単なる成長とはとらえません。
イライザがさらに州大会でも優勝し、全米大会進出を決めたとき、彼らは、それぞれの歪んだレンズを通して、娘に勝手な解釈を加えます。

宗教マニアの父は、これこそ神が特別に与えた恩恵と信じこんでしまいました。自分が若い頃から求めても得られなかった神との対話を、娘の特別な能力を通じて実現できるかもしれない。彼は勢い込んで娘の教育=洗脳にとりかかります。
母は母で、自身の経験から、イライザが親の歓心を買うために自分を失っていると考える。そして、娘を無邪気な子供のままに留め得ない苦しさと、親の期待に抑圧されていた少女時代の記憶に追い詰められ、自らの心の病を悪化させます。

一方、これまで父の最大関心事だった兄は、すっかりなおざりにされてしまいます。両親にとっては「自慢の息子」ですが、実は、晩生で典型的ないじめられっ子タイプ。父の期待と干渉が、彼を支えると同時に、精神的自立を遅らせる原因ともなっていました。
父の視野から外れて、ようやく大人への道を踏み出すかに見えますが、これまで無批判に受け入れてきた父の価値観に疑念を持ったまでは良いけれど、彼のひ弱な自我は、ほんとうの意味で自立する前に、父の代替物のふところに飛び込んでしまいます。

さて、イライザのコンテスト準備は、最初、自室に鍵をかけて閉じこもる、一般的な思春期スタイルで始まりましたが、やがて父の強い希望を受け入れて、場所を父の書斎に移します。
書斎は、これまで兄以外は自由に入ることを許されなかった特別な空間。父に構ってもらえなかったイライザは、この退行現象に抵抗を感じるどころか、有頂天になります。しかし、閉じられた室内で、父の洗脳にどっぷり漬かって、彼女の主体性は次第に失われてゆく。
たのしいゲームだった勉強は、全米大会の頃には、宗教的な苦行に変わりはてていました。そして、敗退。
しかも、父と彼女の留守に、軸を失った家庭は薄皮一枚残して完全に崩壊してしまいます。

それでもまだ、全員が自分の問題に夢中になっていて、全体の危機的状況に気付かない。翌年のコンテスト目指して、父とイライザの「修行」が厳しさを増すなかで、形骸化した家庭は、一気にカタストロフへ向かうのでした。

父も、母も、兄も、自分に欠けたものを埋めようと、必死にもがいています。
父は、果たせなかった社会的な成功を。
母は、充足した子供時代を。
兄は、強い「男性」を。
そして、三人とも、それぞれに完全なる世界(パーフェクト・ムンド)の実現を夢見るのですが。
探す場所を間違えています。

イライザも、彼らさまよえる子供たちの仲間になってしまうのか、
それとも、自分を取り戻すことができるのか。

二年目のコンテスト前夜に起こる、イライザのトランス状態の意味がもうひとつよくわかりません。思春期の精神的なスッタモンダが一夜のうちに起こったということなのかな。
この不思議な体験が吉と出るのか凶と出るのか、最後までハラハラさせられますが、それはさておき。

人生もコンテストも、ほかの人や神様にやらされているわけではありません。するかしないか、どう生きるか、選ぶのは自分自身。
選択がなんであれ、自分に誠実なら、神様はきっと結果を見守っていてくださるでしょう。     2005/12/22改






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