常世国往還記

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駆除される人類

2009/02/01(日) 23:26:18

深海のYrr 上 (1) (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)
フランク・シェッツィング 北川和代訳
早川書房 (ハヤカワ文庫) 2008年

南米の沿岸域で、原因不明の小型船遭難事件が相次ぐ。
同じ頃、地球の反対側、ノルウェーの海洋生物学者ヨハンセンのもとに、海底のメタンハイドレート採取業者から、新種のゴカイが届けられた。微生物を主食とする動物には不釣合いな、大きな顎を持つ珍種に、ヨハンセンは首をひねる。いったい、この顎はなにをするためのものなのだろうか。
一方、カナダ西岸ではホエールウォッチングツアーがクジラやシャチに襲われ、多くの死者を出すという悲惨な事件が起きた。ツアーの監修をしているクジラの研究者アナワクは、クジラたちの行動に明確な敵意を感じて衝撃を受ける。さらにフランスで、猛毒の微生物に感染したロブスターが破裂し、調理人が死亡した。病原体は水道水に侵入し、感染が爆発的に拡大していく。
はるか昔、生命をはぐくみ、人類に変わらぬ恵みをもたらしてきた海が、唐突に牙をむいたのだ。次々とやってくる「海からの危難」に、世界はなすすべを知らなかった。


生物・地学系の新知識を軸にしたSFパニック小説。
この手の話は故マイクル・クライトンの独壇場かと思っていましたが、意外にもドイツの、しかも全く畑違いの大衆作家の手になるものです。
各巻500ページ超の大作ですが、大事件・大惨事の連続、巻ごとに二つか三つの山場があり、緊張感がゆるむことなく、最後まで一気読みです。

素人さんとはいえ、かなりがっちり調べて書いていますので、知識面でも読み応えがあります。ただし、下敷きになっている研究成果を事細かに説明しているにもかかわらず、グラフ・数値等の資料を捏…もとい、創作できないところが、クライトンとの最大の違いか。地図くらいは入れてくれてもよかったのにな。
基本はベルヌやウェルズをなぞったといってもいいほどの正統派SF小説に、現代風の手に汗握る大仕掛けなアクション&サスペンスを加味し、ラヴクラフトふうの薄気味悪い海洋ホラーで味付けという、サービス満点のエンタテインメント。
欧米ものらしく聖書のメタファー(相当皮肉のきいたキリスト役ですが)へと収束し、小説的な小難しさも全くありません。

登場人物が多いこと(人物一覧と首っ引き)と、あくまでもストーリーが主体で、これといった主人公はいないことくらいが要注意事項でしょうか。
主役級の人物を惜しげもなく捨てていきますので、特定のキャラクターに思い入れるとがっかりします。人間ドラマとしては淡白ですが、そこにこだわっていたら分量が倍になって、スピード感も半減してしまったでしょう。パニック度からいって、主要人物が誰も死なないというのは不自然ですし、展開上しかたありません。
誰が残るのか、誰も残らないのか、結末が全く予測できませんでした。

クジラやイルカの保護、乱開発や不法投棄が引き起こす諸問題などの話題から始まりますので、これはエコ小説かと思いきや、後半一転、正反対の方向に走り出してびっくり。
人間の描くものは人間の文化を反映するというお約束の通りに、人類をおびやかす至高の存在「イール」は、自然をよりよく支配しコントロールするという、西欧社会の伝統的な命題の反映です。
それと関係するのかどうか、この作者は、アジア人嫌いと見た。一見国際色豊かな研究チームも、よく見ると欧米以外はエスキモー・インドなど、英米に植民地化されたことのある地域の人だけなんですよね。
話がクジラがらみなので、捕鯨国日本を排除するのは仕方ないとしても、中国あたりはまぜてもよかったのでは。共産主義と帝国日本は、ドイツのトラウマなのかしら。
そのへんが、この作者の限界かも、と思いました。


映画化予定だそうですが、二時間に収めるには話が複雑すぎるので、かなり端折った内容になるでしょう。
映画の脚本が原作を超えることはないと思いますが、うまくいけば映像的には、「パーフェクト ストーム 」どころではないスペクタクルです。これは断然、劇場で見るべきでしょう。

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読んだ本TB:0CM:0
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