常世国往還記

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オセロゲーム

2007/05/09(水) 18:05:41

エンジェルズ・フライト〈上〉
マイクル コナリー  古沢 嘉通 訳
扶桑社 (2006/01)

ハリウッド署殺人課のボッシュは、せっかく非番の日だというのに、家にこもって、戻らぬ妻エレノアからの連絡を不安な思いで待っている。鳴り出した電話に飛びついたボッシュに告げられたのは、予期した妻のことではなく、LA郊外のケーブルカー“エンジェルズ・フライト”の車内で、二名の他殺死体が発見されたとの報だった。なぜ管轄外の彼に呼び出しが? ボッシュの疑問は、現場で氷解する。
被害者の一人は、管轄署と係争中の、人権問題専門弁護士エライアス。死体の状況から、動機は、エライアス個人に対する怨恨の線が濃い。怨恨…となると、裁判の被告である市警察の警官が、容疑者の筆頭ということだ。
身内を取り調べるという嫌な役回りを命じられたボッシュ。しかも、被告の一人は、彼のもと相棒シーハンだった。シーハンの公正な人柄に絶対の信頼を置くボッシュは、彼にかかった二重の疑いを晴らすべく、チームを率いて事件の真相を探り始めるが、警察内部の人間による捜査妨害、組織の政治的な動きや、人権訴訟を恐れるあまりの過剰なまでのコンプライアンス、マスコミに煽られた黒人コミュニティによる見当違いの報復など、ありとあらゆる障害に阻まれ、事態はボッシュの期待とは逆へ逆へと動いていく。


OJシンプソン事件以来、人種差別問題に関して非常に神経質になっている警察内部の様子が描かれています。それまで気を遣わなさすぎの感もあり、それがとかくの噂の種にもなっていたので、努力目標としてこの程度はあってもいいのではないかと思わないでもありませんが、現場は確かにやりにくいでしょうね。
日本でも、一連の企業不正事件などから、各社でコンプライアンスが合言葉のようになっています。そのための仕事が増えて、実務にあたる社員は大変。コンプライアンスにかまけて、本業が滞ることも少なくありません。ボッシュの愚痴に共感する人も多いでしょう。
この小説では、現場の風通しを良くし、関係者全員が情報を共有しようと努めた結果、逆に情報リークを招き、捜査を阻害してしまうという皮肉な成り行きを書いています。しかし、確かにそのような危険もあるとはいえ、やはり隠密行動は、「絶対的な正義」が存在するフィクションのヒーローには許されても、現実社会で推奨されるべきではないでしょう。

シンプソン事件を髣髴とさせる冤罪裁判のみならず、全体が、日本でもよく知られているもう一つの超有名未解決事件を思わせる展開で、ジャーナリスティックな雰囲気がぷんぷん漂うミステリです。さて、ボッシュのいない現実界での事件の真相はいかに。


ところで、「ハードボイルド」を意識してか、えらくスカした邦題が付くことの多いマイケル・コナリーの警察小説。この作品も、もとは「堕天使は地獄へ飛ぶ」というたいそうな(しかもネタバレっぽい)タイトルが、原題どおりシンプルに改題されました。
タイトルがずばり事件現場の名称であると共に、エンジェルが意味するのは、黒人社会の守護天使とうたわれる弁護士エライアス、誘拐殺人事件の被害者である美少女、署内コンプライアンス委員会とでも言うべき内務監査課、正義を貫くボッシュとも考えられるし、もちろんLAのことでもあるだろうし、なかなか意味深です。

障害に立ち向かうボッシュの勇気を強調するあまり、「予想外の困難」が頻繁に起こりすぎ、かえって先が予測できてしまうあたりが、ミステリとしては難点ですが、作者の筆力で細部まで読ませます。人間観察に優れた作家で、登場人物の性格描写が見事です。
特に魅力的なのは、主人公のボッシュ。能天気な正義のヒーローではなく、人間的な弱点を持った複雑な人物として描かれています。市警察の天敵エライアスを毛嫌いしていたり、人種差別に関するいかにもな偏見があったり。我々にも感情移入しやすい、ごく普通の庶民の一面を持ちながら、一旦仕事に入ると、偏見も先入観も乗り越えて真実に迫ってゆく。現実に、これほど柔軟かつ強靭な人は、居そうで居ない。

サイドストーリーである彼と妻エレノアとの夫婦関係も一筋縄ではいきません。
エレノアは精神的な問題を抱えていて、一見、強いボッシュが弱い彼女を保護しているかのようですが、実は強面なボッシュの負の部分を引き受けているのがエレノア。結婚に寄りかかっているのはボッシュのほうで、彼女はボッシュを支えきれなくなって、逃げ出そうとしている。ボッシュはほんとうは、事件どころではないくらい焦っているのですが…。

事件は解決したけれど、二人の関係は遂に破綻? この先の展開はいかに。
探偵のプライベートな物語でつなげていくところは、R.パーカーのスペンサーものと似ていますが、スペンサーの最近作のような、単なるキャラものになってしまわないといいのになと思いつつ、シリーズ追っかけてみます。

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