常世国往還記

本と映画のノート



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島々をむすぶ物語

2006/11/17(金) 17:23:01


原題を直訳すると「『デス博士の島その他の物語』その他の物語」です。"the other stories"が、二度繰り返されている。タイトルから既にウルフの術中ですね。
ISLAND,DOCTOR,DEATH の組み合わせによる三題噺の連作を中心に、誰もが知っているファンタジーや物語をモチーフに使った作品を集めた、お話好きには楽しい短編集です。

著者まえがきによると、ことの発端は、最初に書いた「デス博士の島その他の物語」がかのネビュラ賞を取り逃がし、しかも、授賞式で、主催者側の手違いから誤って受賞作として発表されてしまったため、ウルフとしては非常にばつのわるい思いをした。そのことに同情した友人が、選考委員会に大きな貸しをつくったんだから、今度は「アイランド博士の死」かなんかで小説を書けば、きっと受賞間違いなしだぜ、と冗談半分にけしかけたので、試しに同名の小説を書いたところ、ほんとうに受賞作に選ばれた、というウソみたいなホントの話…いや、本当にホントなのかなあ??


島の博士の死:上記の「まえがき」に含まれる掌編。三題噺連作中最後の作品とのことですが、大学内の幽霊ゼミ・“島学”講座を主催する変わり者の老教授と、偶然彼に教えを請うことになった男女二人の学生の話を通じて、本書のテーマである「島」が意味するものを解き明かしています。
ウルフにしては、珍しく親切じゃないですか。

デス博士の島その他の物語:「デス博士の島」は、主人公のタッキー少年が読んでいる本の題名。一読してわかるとおり、異形のクリーチャーとマッドサイエンティストものの原型になった、SFの古典的名作「モロー博士の島」(H.G. ウェルズ)の亜流小説です。
彼の読む物語と、彼自身の物語、それに、大人たちによる別の物語が交錯します。孤独な少年の、せつないファンタジー。表紙を開けば、いつでも最初から読みなおせる物語と、やりなおしのきかない実人生の皮肉な対比が描かれます。

アイランド博士の死: てんかん治療のために脳梁切断術を受けた患者の脳を、島になぞらえ、脳の各機能がそれぞれニコラス、ダイアン、イグナシオなど、別人格として現れて、互いに交渉しつつ、統合に至るさまを描いた奇想小説。「豚の島の女王」でカーシュがやったことと似ています。ウルフはカーシュほどシニカルでないとみえて、一応「最も美しい創造物」と持ち上げている「島」ですが、中身はもっとヘンテコリンです。
作者が言うように、ある意味先の「デス博士の島…」のひっくり返し。少年の意識に浮かんだ出来事が外部に投影される「デス博士…」に対して、この作品では、外界からの刺激による感情の動きや発作によって脳内に巻き起こる現象が、視覚的に表現されます。特に「焦点」は秀逸。
芭蕉の佐渡の句も、こんなところに引用されると、まったく別の味わいです。何かとおもっちゃった。
普通のファンタジーに近い「デス博士…」に比べ、知的な刺激にみちたこちらの話のほうが本来のSFらしく、委員会への貸しなどなくても、ネビュラ賞によりふさわしいように思いますが、どうでしょうか。

死の島の博士: ディケンズの小説をモチーフにあしらった短編。ディケンズは、今の日本ではあまり読まれないと思いますが、アチラではハイスクールの課題としてポピュラーらしく、アメリカの高校生ドラマなどを見ていると、よくディケンズのレポートを書く話が出てきます。というわけで、たいていのアメリカ人なら、「はいはい、あれね」とピンとくるはずのところが、日本人の私にはよくわかりません。多少見分けがつくのは、「大いなる遺産」と「オリバー・トゥイスト」くらいでしょうか。残念です。
末期癌の囚人が、冷凍睡眠処置を受け、半世紀近くを経て蘇る話。「大いなる遺産」の囚人の話に重なると同時に、「デス博士…」で、少年がデス博士の死を見たくないがために本を閉じてしまう、というくだりを受けたかっこうです。
医療の発達と冷凍睡眠によってほぼ不死を達成し、またクローン技術によって(まるで本に書かれた物語のように)何度でも再生がきくようになった未来世界で起こる、アイデンティティの拡散を描きます。

アメリカの七夜:「千夜一夜物語」の反転。未来の世界を舞台に、遺伝子の汚染によって荒廃した“後進国”アメリカを訪れた“先進国”アラブの青年の旅行記のかたちで語られる奇談です。彼が見たのは、現実かまぼろしか。数も重要です。

眼閃の奇蹟: 盲目の浮浪児ティブのまわりに広がる、聖書や「オズの魔法使い」などを下敷きにした童話のような物語。目を開ければ目が見えず、目を閉じれば目が見えるという、通常とは逆転した彼の世界を通じて、夢と現が交錯し、最後にひとつになります。
大人になると失われてしまう、子供の夢見る力をテーマにした健康的な作品。「デス博士…」の発展形ですが、主人公の想像力が、現実世界のなかでさらに力強く発揮されます。
大人だけれど、子供のように素直な心を失わない、気のいい相棒も素敵です。
ちなみに、アリスとミッキーは悪役(笑)。なんとなく分かる。

 
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読んだ本TB:1CM:1
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コメント
珍しくくだりとか
珍しくくだりとか、よく最後とかかっこうとかを発達しなかったよ。


BlogPetのありす #-|2006/11/19(日) 11:51 [ 編集 ]
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『大いなる遺産』
これまでに幾度となく映像化されてきたチャールズ・ディケンズの名作小説を、『リトル・プリンセス』などのアルフォンソ・キュアロン監督が、オールスター・キャストを用いて、舞台を現代のアメリカに移して映画化。 海辺の町に住む孤児の少年が、ある日脱獄犯(ロバ
1-kakaku.com|2006/12/08(金) 02:13

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