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常世国往還記

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Author:かもめ
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レトロな翻訳短編集

2006/10/13(金) 17:10:58

 
中島 河太郎 編
立風書房


往年の雑誌「新青年」から、翻訳ものを集めた短編集。オー・ヘンリー、ポーなど有名どころから、経歴不明のマイナー作家まで、幅広く渉猟した盛りだくさんの内容。一作家一作品、短編掌編ばかりとはいえ、二段組でかなりボリュームがあります。
怪奇幻想、ミステリ、ユーモア、人情話など、中身もさまざま。よくもこれだけ拾ってきたものと、感嘆しきりです。こういう雑誌の編集って、楽しかったでしょうね。

マイナスの夜光珠(ビーストン):トリック小説。「新青年」では一時期非常に人気があった作家だそうですが、珍しいアイデアに引かれる読者が多かったのでしょう。
葬式フランク(ランドン):葬式狙いのけちな詐欺師の回心。
サムの新弟子(マッカレー):凄腕スリのサムに弟子入りしたとっぽい兄ちゃん。そのボケっぷりに振り回され、怒り心頭のサムだったが。
或る精神異常者・生さぬ児(ルヴェル):二編とも「夜鳥」に収録されていたはず。どちらも甲乙つけがたいほど嫌な話。
撓ゆまぬ母(オーモニア):今でいえば、熱心なお受験ママかな。最後の講評がうがっています。
砂嚢(オルチー):「紅はこべ」のオルチー。懐かしいです。これはなかなか奇抜な探偵小説。
怪我をする会(ウッドハウス):素寒貧どもが無い知恵をしぼって、賠償金詐欺をたくらむ話。ジーヴスシリーズのウッドハウス。後味は悪くないけど、あんまり笑えない。
ルウフォック・ホルメスの冒険(カミ):珍しくも探偵ものの戯曲。「火葬にされた男の帰宅」「血塗れの細菌」「スフィンクスの謎」「道化師」の四篇。なんというか、そこはかとなく笑えます。
砂男(ホフマン):往年はたいそう人気のあったホフマン。今は翻訳を見つけるのが難しい。これは、コッペリウス変奏。バーチャル美人に溺れるというのは、今にも通じそうな話ですね。砂のように虚しい情熱の物語。
蜘蛛(エーウェルス):男ってどうしようもないわね、まったく!
最後の一葉(オー・ヘンリー):あちらでは日本ほどの人気はないそうな。確かに日本的な、ウエットな人情話ではありますね。
市長室の殺人(フレッチャー):ミステリというよりは、奇談かも。レトロな雰囲気が楽しい。
恐ろしき夕刊(フロスト):たいへんモダンなミステリ。小道具が凝っています。
実験魔術師(アルデン):オカルト風味のマンガみたいな短編。幻想小説かと思いきや。脇の甘さに爆笑。
瘋癲病院異変(ポー):ポーは昔かなり詰めて読んだので、これも知っているはずだけど、忘れてた。正気と狂気の境目を器用に綱渡りする、ポーならではの、独特なユーモア。
猿の足(ジャコブス):有名な「猿の手」のお話。
死人の村(キップリング):「ガリヴァー旅行記」かと思ったら。キップリングにこんなネタがあったんですね。「ジャングル・ブック」以外の翻訳は珍しいのでは。
意外つづき(ブラックウッド):タイトルそのままです。あれよあれよ。
稀代の美術品(モリソン):盗まれたカメオの謎。昔のミステリは、殺人ばかりではありませんでした。いつごろからミステリ=殺人事件になってしまったのでしょうか。
オスカア・ブロズキイ事件(フリーマン):「下山事件」みたいな話。倒叙法が新機軸だったようです。
空室(マーキー):ちょっと無理がありはしませんか? 都市伝説っぽい話。
幻の扉(ポースト):あれ?あれれ? 最後でちょっと混乱しました。現代小説なら大変なサスペンス展開になりそうなものですが、意外とのんきですね。
絡み猫(ベイリイ):隣家に、いるはずのない少女の姿が。迷い猫がらみで明るみに出た謎。子供のつくり話か、はたまた悪質な犯罪か。
蜜蜂殺人事件(ウィーン):当時、おそらく最新科学ネタだった、抗原抗体反応を用いたトリックです。
完全脱獄(フットレル):脱獄ゲーム。あくまでも実験なので、「ショーシャンクの空に」のような緊迫したドラマ性はありませんが、それなりに奇想天外です。

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