常世国往還記

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斜陽

2006/07/19(水) 14:33:37

小説も映画も、ずいぶん前の感想ですが、ジーヴスが思い出させてくれたのでup。


日の名残り
日の名残り(book)
posted with amazlet on 06.07.15
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro 土屋 政雄
早川書房 (2001/05)


郊外のお屋敷ダーリントン・ホールで執事を勤めるスティーブンス。
彼の精勤ぶりは、現在の主人である米国人ファラディ氏の賛嘆の的だが、彼自身は老境にさしかかって、仕事に限界を感じ始めていた。また、彼の心はいまだ、亡くなった前主人ダーリントン卿とともにあり、変わり行く屋敷の暮らしぶりに違和感を覚えてもいるのだった。
ある日、彼は休暇を利用して、ダーリントン卿時代の同僚ミス・ケントン(ミセス・ベン)を呼び戻しに出かけることを思い立つ。有能な女中頭だった彼女に仕事の補佐を頼むのが主な目的だが、それは、一部には、過ぎ去った幸福な若き日への郷愁からでもあった。
以下、物語はスティーブンスの道中記に、過去の記憶を重ね合わせて辿っていきます。


執事というと、漠然と、使用人の中でいちばんえらい人くらいにしか理解していませんでした。もちろん、一般の使用人が出世してのぼりつめることもあるけれど、これはこれで、特殊なプロなのですね。
屋敷の支配人、といったところでしょうか。とにかく、経理、人事、総務から各種イベントの手配まで、ありとあらゆる屋敷の雑事を統括する役職のようです。したがって、例えば各国首脳を私邸に集めて××会談を催すなどということは、有能な執事無しにはかなわない。
政界の重鎮だったダーリントン卿の活躍は、裏方の一切を取り仕切ったスティーブンスと表裏一体になって成し遂げられたものでした。

昔ながらの田園風景をゆく道すがら、スティーブンスは卿とともに過ごした得意の日々を楽しく思い返します。数々の著名な客人から受けた称賛、思いやりのある主人だった卿や、卿を囲む人々との交流、そのエピソードごとに、ミス・ケントンとの反目や友情、そして恋と呼ぶには節度のありすぎる、微妙な愛情がからんでいます。

しかし、旅が進むにつれ、思い出は次第に苦しいものへと様を変えてゆく。
旧世代の人間らしく、なにより品格を重んじたダーリントン卿であり、執事スティーブンスでしたが、あまりにも高い矜持ゆえに、大切な人の心をないがしろにし、時代の流れを見誤り、結果として卿は失脚。主を失ったスティーブンスは、ミス・ケントンの去った空っぽの屋敷とともに、時代からも人生からも取り残されてしまう。

誠実な執事であることが人生のすべてだったスティーブンス。尊敬する主人と、愛する屋敷と、身も心も一体だったスティーブンス。
しかし、いつのまにか、現在の主人ファラディがそうであるように、誰にとっても個人の幸福が最も重視される世の中になりました。職業はそのための単なる手段にすぎません。もはや、社会的な地位や職業そのものをアイデンティティとする生きかたは、とうに時代遅れになっていたのです。

旅の終わりに、スティーブンスは、はたして新しい人生を見出すことができるのか。
彼の名残りの日々が少しでも明るいものであるよう、願わずにはいられません。

 
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