常世国往還記

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「私」という名の身体

2006/07/03(月) 18:51:39

蝿(はえ)
蝿(はえ)(book)
posted with amazlet on 06.07.03
ジョルジュ ランジュラン George Langelaan 稲葉 明雄
早川書房 (2006/01)


SFと呼ぶにはいささかトウが立ってしまいましたが(1962年刊)、語り口の上手さと秀逸なオチで、ホラーファンタジーとしての魅力はおとろえていません。
フランス語の本なので、著者は当然フランス人かと思ったら、実は生粋のイギリス人。親の仕事の都合で、フランスの教育を受けており、完璧な英仏バイリンガルだったようです。戦時中は、語学力と土地勘を活かして、MI5の情報活動に協力。おお、アシェンデンさながらですね。
このスパイ経験をもとに「NATO情報部員シリーズ」なんていかにも面白そうな作品もあるのですが、残念なことに、現在翻訳で入手できるのは、この一冊だけのようです。
過去にはハヤカワポケミスの「魚雷をつぶせ」(絶版)、あとは、ミステリマガジン366号に、短編「殺人者」が掲載されているのみです。


: 秘密の実験に取り組んでいた天才科学者ハリイが、妻に殺害された。スチームハンマーで、頭部と腕を元の形もわからぬほどに潰された、無残な死に様であった。妻のアンは罪を認め、無抵抗に逮捕されたが、殺害の動機は全く不明、しかもスチームハンマーの動作に関して全く無知な彼女が、どうやって殺人を実行したのか、捜査が進めば進むほど、事件は不可解な様相を呈してきた。
手詰まりになった警察は、一応“突然の狂気”による犯行と理由付け、アンは精神病院に収容される。しかし、彼女に狂気の徴候はなく、また、取調べの際の非協力的な態度からみて、事件にはまだ何か裏がありそうな。
やがて、トウィンカー警部は、アンの奇妙な行動に気づく。彼女は、院内に入り込んだハエに異様に執着するのだ。これは狂気の表れか、それとも、事件にハエが関係しているのだろうか?

蝿男の恐怖」、リメイク版「ザ・フライ」、二度にわたる映画化で有名な短編。映画のほうもホラーの古典的名作ですが、しかしこれは、原作が断然面白いです。映画のほうでは、映像で悲劇の経緯を追うために、多かれ少なかれ、殺される科学者の視点が入ってきますが、小説では、肝心のハリイは既に物言わぬ死体。物語はすべて、妻の告白と、警部やハリイの弟アーサーの推測から成り立っている、ということは、真相は誰にもわからない。
この、あまりに途方もない話は、見かけどおり狂った妻の妄想かもしれない。あるいは、人生に行き詰った夫の幻覚かも、もっと突き詰めれば、カフカの「変身」の裏返しで、ザムザの妻(が居たとして)の物語と見ることもできます。

奇跡: 外交員のジャダン氏は、鉄道事故で九死に一生を得たものの、下半身不随の障害者になってしまった。もう外交員として働くことはできない。この先どうすればいいのかと泣く妻。ところが夫妻のもとに、鉄道会社からの多額の補償金の話が舞い込んで……。
禍福はあざなえる縄のごとし。あのルルドの泉伝説のからんだ、フランスの短編作家にありそうな、皮肉なお話です。

忘却への墜落: 予知夢をめぐる、どことなくヒチコックふうのサスペンス。完全犯罪の成り行きは…。背景には戦争の生んだ悲劇と狂気がひそんでいます。

彼方のどこにもいない女: TVの深夜番組終了後、突然画面に現れた謎の人影。テレビの故障?それとも電波ジャック? 突然失踪した弟の行方をたどって、兄がたどりついた真実とは。
核の恐怖にからめたロマンティックホラー。うーん、このオチは怖い。

御しがたい虎: 「山月記」の別バージョン。身長コンプレックスの男が、妙な虚栄心から身を滅ぼす話。

他人の手: 医師のもとに、“右手を切り落としてくれ”と要求する奇妙な患者が現れた。医師が拒絶すると、男は病院を出るや否や車道に飛び出し、右腕を轢きつぶされて戻ってきた。
寄生獣」と同じようなネタですが、こちらは不条理もの。
「蝿」をはじめ、ランジュランには、体と意識の問題にこだわる作品が多いようですが、これもその一つ。

安楽椅子探偵: 自分は一歩も動かずに、頭脳だけで推理する。安楽椅子探偵は安楽椅子探偵でも、これはもう一ひねりしてあります。“吾輩は探偵である” おじいちゃん、かっこいい!

悪魔巡り: 愛犬と妻、大切なもの二つを同時に失った男が、すべてをやり直すために悪魔と魂の取引をするが…。ファウスト博士の悲劇です。

最終飛行: 生涯無事故を誇る幸運な機長の最終フライト。若き日を思い出す彼の前に、不思議な白い鳥が現れて…。ダールの「飛行士たちの話」だったかな、以前似た短編を読んだ気がする。

考えるロボット: 自動車事故で死んだ婚約者の死を受け入れられないペニーのために、ルイスは危険を冒して親友ロベールの墓をあばく。ところが、埋葬所に納められた棺は何者かによってすでに開かれ、中にあるはずの遺体が消えていた。ロベールは生きている! ペニーの主張は正しいのか? 彼女は、公爵夫人のサロンで話題の“チェスを指すロボット”にロベールが一枚かんでいるに違いないと言うのだが。
エドガー・アラン・ポオの「メェルゼルの象棋さし(メルツェルのチェスプレイヤー,「ポオ全集 新装版 (3)」所収)」からの発想。ヴァン・ケンプリン(フォン・ケンベレン)男爵のロボットはインチキでしたが、もし本物だとしたら、それはどういう仕組みなのか…。
これも、人間の身体と意識に関する作品。まだ人工知能には遠い時代の素朴なお話ですが、これが発展すると、イーガンの“コピー”などへつながっていくようにも思います。

「メェルゼルの象棋さし」を基にした、こんなお話も出てきているようです。
新刊ですね。


   
第九の日 The Tragedy of Joy
瀬名 秀明
光文社 (2006/06/21)





 
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安楽椅子探偵安楽椅子探偵(あんらくいすたんてい、アームチェア・ディテクティブ、Armchair-Detective)とは、ミステリの分野で用いられる呼称で、狭義では安楽椅子(語意通りなら肘掛け椅子だが)に腰をおろしたままで、人から事件に関する話を聞き、それに基づいた推理で
ミステリー館へようこそ|2007/08/07(火) 13:33

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