常世国往還記

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生かす金、殺す金

2006/06/08(木) 19:45:20

村上ファンドがつまらないことになって、本当にがっかりさせてくれますね。上手の手から水が漏る、ということならまだしも、もし確信犯なら投資家の風上にもおけないぞ。

「だいたい、この人頭悪いよな。こういうときは、しょんぼりして見せればみんな満足するのにさ。この期に及んで偉そうに物を言うから叩かれるし、痛くも無い腹をさぐられたりするんだよ」
いや、2号ごときに頭悪いとか言われたくないでしょうが、やっぱりどこか苦労知らずで甘いところがあるようにも思います。世の中なめてるというか。一般大衆にもっとも嫌われるタイプですね。

しかし、だからといって、近所の奥様がたのように「株式投資って、ほんとロクでもないわよね! まともな人間のすることじゃないわよ。株に投資する人の気がしれないわっ」と極めつけるのもちょっとどうでしょうか。 投資家がいなくなったら、みなさんのダンナの勤め先(東証一部上場)、なくなっちゃいますよ? 


ナニワ金融道 1

青木 雄二著
講談社 (1999.3)
通常2-3日以内に発送します。



連載当時、ひそかに“銀行員のバイブル”とうたわれた名著。今は遠い昔の話となったバブル期を背景に、街金の新入社員灰原くんの目を通して、金に踊らされる人々の悲喜こもごもの狂態を描いた作品。
これで絵が上手かったら、もっと救いのない雰囲気になっていたのではないかと思われますが、幸か不幸か、どうにも素人くさい画風が、かろうじてコミカルな味を出しています。このあたりの事情が、ちょっと「失踪日記」と似た感じ。

たいへん下品な絵柄ですので、男性向けコミックということを抜きにしても、女性がレジに持って行くには非常に抵抗を感じる商品ですが、一般に言ってこの分野に弱い女性(もちろん例外はあります)にこそお勧めです。
お子様にも、つまんない消費者教育よりよほどためになる読み物ですが、シモネタとか、ちょっとアレなエピソードは、刺激が強すぎるかもなあ。…と言いつつ、手遅れになる前に、と、2号3号には小学校高学年で解禁しました。
「おかあさん、ソープって怖いんだね!」「うむ~(汗)」
ま、世の中清く正しいことばっかりじゃないし、年端もいかないガキに株の売り買いなんか教えるよりは、ず~っとまともじゃないですかね。

まじめな事業主の借金地獄から、先物取引、詐欺、裏金融、マルチなど、ありとあらゆる借金がらみの事件と、巻き込まれた人間の末路が容赦ないリアリズムで描き出されます。ネット詐欺やフィッシングは出てきませんが(まだ無かった)、人間の弱さと、そこにつけこむ悪い奴らの手口は不変。今も充分通用する教訓が満載です。
どうするアイフルの件で浮上したサラ金の“グレーゾーン”についても一筋縄ではいかないという気がするし、デイトレーディングなんか、素人は絶対手を出しちゃいけないと思いますね。ホント危ないですよ。

しかしまあ、それだけなら、「お金って怖いよね」で終わってしまうのですが、このマンガが偉いのは、「金融道」のタイトルが示すとおり、高利貸しとしての街金に疑問を持った灰原くんが、「お金っていったいなんだろう」と考えていくところにあります。他人の不幸に燃料投下、みたいなことしかできないのか。自分の仕事が世の中を幸せにするようなやりかたは無いんだろうか。

そこで彼の行き着く先が、有望なベンチャーへの“投資”です。ベンチャーといっても、街金のことですので、普通の金融機関では到底融資してもらえないようなうさんくさい事業ですが、まあ、ベンチャーなんて最初はどこもそんなもの。能力とやる気のある事業主に資金を提供し、こちらからもアイデアを出したりしながら、会社を育て、持ちつ持たれつで回収していくというやり方です。

きれいごとと言えばきれいごとですが、これが“投資”の基本理念だと思います。あぶく銭をもうけるために、相手をぶったたいて、さかさにして、回収する、そんなことばかりでは、市場そのものが痩せていってしまう。
グリーンメーラーや、インサイダー取引が良くないこととされるのは、ただ単に“ズル”だからというだけでなく、そんなことが横行したら、市場全体がだめになってしまうからでしょう。
村上さんは、「プロ中のプロ」と豪語するなら、当然その点に関して自覚があるものと思っていたのに。ファンマネ全体のイメージを著しく落としてくれましたね。

ずいぶん前になりますが、ヤフー創業当時、“会社を起してがんばっている近所の大学生を応援するつもりで”夫の遺産の一部で株を買った未亡人が、ヤフーの急成長で億万長者になった、という話がありました。亡夫はたしか平凡な勤め人だったはずです。夫が額に汗して作った虎の子の遺産。海のものとも山のものともつかない学生起業家に「いっぱつ当ててもうけるわよ!」と思って出したお金ではなかったでしょう。こういうのが、理想的な投資ですね。

 
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