常世国往還記

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弔いの旅路

2006/06/05(月) 17:20:38

梅里雪山―十七人の友を探して

小林 尚礼
山と溪谷社 (2006/01)


1991年正月、隊員全員が消息不明という最悪の結果に終わった梅里雪山初登頂計画。その七年後、氷河の下流から次々に発見された遺体と遺物の回収の任をになって、現地に長期滞在し、2005年まで継続して捜索活動にあたった著者の、聖山カワカブ(梅里雪山のチベット名)への思いと、死者への哀惜、また、滞在先の明永村と山間に暮らす人々の敬虔な生き方をつづった書。
著者は、趣味が嵩じてプロになったというフリーの写真家。雄大な自然、村々の鄙びた習俗や珍しい植生など、写真集としても一見の価値があります。

自然相手のスポーツには、不測の事態が伴うもの。その、不確定要素の存在が、日ごろ鍛えた腕の見せ所でもあり、かえって面白さの一部でもあるのでしょうが、整備の行き届いた国内の登山道でさえ、天候の急変などから大事に至ることもしばしば。ましてや、人跡未踏の険阻ともなれば、もともと生命の危険は覚悟の上の挑戦だったことと思います。

では、はたして、梅里雪山初登頂に、その後の人生すべてと引き換えにするだけの価値があったのかといえば──それはやはり、あったかもしれませんね。
写真で見る限りでも、信仰の対象となって不思議の無い、ひれ伏したくなるほどの威容。芥子粒のような人の姿の、なんと小さく頼りないことか。
遺体の無残なありさまを目にしてもなお、この山頂の征服に命を賭ける気持ちはわからなくもないような気がします。

しかしまた、この計画失敗の原因の一端も、本書の中に、言わず語らずながら、それとなく提示されているように思うのです。
もとより、著者の本意は事故原因の解明にはなく、ましてや責任追求などでは全くありません。しかし、明永村の滞在記からは、カワカブを信仰の対象としてうやまい畏れる地元の人々と、登山をスポーツの一種と考え、単純素朴に「そこに山があるから」登ろうとする外来の登山家との間の、越えがたい溝が見て取れます。

村人たちとの交流を深めた著者は、村人に伴われて、山すそをめぐる巡礼を繰り返すうちに、人間の領域と神の領域の境を、はっきり意識するようになっていきます。
この山に登るということは、侵しがたい神域に踏み込むこと。登山技術や綿密な計画以前に、自覚すべき大切なことがあったのではないだろうか。



未曾有の大遭難事故にしては、マスコミへの露出が少なく、遺体・遺品が発見されたときも、(私が知る範囲では)新聞に小さく報道された程度。
国内のちょっとした遭難でも大きく取り上げられることが多いのにと、長らく不審に思っていましたが、本書でようやく謎が解けました。
辺鄙な土地だというだけでなく、地元の人々の外来者に対する警戒心や反日感情など、マスコミが興味本位でおいそれと入り込めるようなところではなかったのですね。しかし、部外者のいい加減な憶測や責任追及などにさらされることなく済んだのは、遺族の感情を思えば、実に幸いなことでした。

ちなみに、前回の「ウェブ進化論」(pingがまた飛んでないっぽい)で、ロングテールの例として引き合いに出されていた“登山の悲劇本(無神経な言い方だね)”・「空へ」と「死のクレバス」に興味を持ち、amazonに検索をかけたら、一緒にひっかかってきたという、ロングテールの、さらに先っぽの毛みたいな……。でも大変良書でした。
thanks 「ウェブ進化論」。


 
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