常世国往還記

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白昼の悪夢

2006/06/01(木) 16:15:15

悪夢小劇場(book)
花輪 莞爾著 新潮社 1992年

お花がニッコリって、おかしな筆名。ひょっと女流かと思っちゃった。

ゆるぎない視点と達意の文章、なめらかなストーリーテリング。この手だれの作家は、芥川賞を逃しているんですね。時の運もあったのでしょうか、賞というのは得てしてそんなものですが、なんだかなあ。
平凡な日常の隙間に開いた小さな裂け目。その意外に暗い深淵にふと落ちこんでしまう悲劇を描いた12題。

ちりじごく: タイトルうまい!! 座布団五枚っ。
免許取りたてのおばさんが、ドライブ中に迷子になる話。本人にはまさしく地獄でも、他人から見ればただのまぬけな笑い話なのが、なんとも救われない。
これが世慣れない主婦ならまだしも、有能な歯科医というところがなおさら笑えます。この人、パニックのさなかにも、妙な職業意識を発揮して無料歯科相談室を始めてしまったりして、地理だけでなく、生活そのものの方向感覚がどこか変です。
知人にもいます、方向オンチの外科医が。そんなんで手術箇所間違えたりしないの?って、シロウトは思うんですが、他人の体を上から見るのと、自分が移動するのとは全然違う感覚なんだそうです。なるほど。
ちなみにその人は男性。「地図の読めない女」という本がありますが、私の周辺に関するかぎり、方向オンチに男女は関係ないみたいです。

景徳鎮: 女流詩人にはおそらくモデルがあるでしょう。この人も「ちりじごく」の歯医者さん同様、おおらかというよりは、どこかネジがはずれたような人物で、周囲に落とし穴がたくさん開いています。自分もよく落ちますが、落ち慣れているのでそれほど怪我はなく、釣られて落ちたまわりの人間がおおごとになるという話。

死者の鼾き: 犬のいびきが憂鬱な話。うちの犬もやります。昼間から大いびきでひっくりかえっているのを見ると、ほとほと脱力しますね。寝ながら屁こいて、自分の屁の音に驚いて飛び起きたり。なんなんだよ。
子供の無い夫婦が飼い犬を人間扱いするという、最近では珍しくもない、(ちょっとグロテスクな)愛犬話に始まって、少しずつ方向がずれていく、日常の怪談。この作者はどうも猫びいきらしく、犬にはいささか点数がからいような気がします。

空いっぱいの窓: ちょっとレトロな雰囲気のミステリ。紙の表と裏のように、背中合わせの対照的な人間像が、幾組も登場します。窓いっぱいの空、空いっぱいの窓、その両面を見ることで、ひとは大人になるのだろうか。

白魔: 登山部のパーティーが雪山で遭難する話。かっちりしたドキュメンタリータッチの文章が真に迫る、山岳ホラーの傑作です。危機的状況下に置かれた集団内で、相互に精神的な感応が起きることって、ほんとうにあるのかなあ。ありそう。
ウィンパー卿のマッターホルン遭難の際、空にかかった巨大な十字架の話(「アルプス登攀記」)を思い出しました。

しあわせ家族: よくある話です。でも、よく出来た話です。出来すぎてる話なんです。だから、ありえない話です、何もかも。

窮鼠: 究極のねずみ捕り器“ジャンボ・チューメツ”vsドブネズミのお話。商品名の馬鹿馬鹿しさが冴えていますが、さあて。この話はちょっと作りすぎたかな。

俗物行進曲: あるある~! 主婦に多いんですよ、こういう人。たぶん悪い人ではないんだけど、あまりに一方的。コミュニケーション能力って、話のうまいヘタ以前に、こういうことがまず問題なんじゃないのかなあ。
でも、ここに出てくる先生は、いくらなんでも人が良すぎます。ウケに徹しすぎ。フィッシングとか先物取引詐欺とか、気をつけてほしいです。

銀輪の檻: 美しいタイトル、ドメスティックな罠。「俗物行進曲」とはまた違った意味での、想像力の貧困と一方的な自己主張が、他者の存在を破壊します。

正気: 深夜、ドライブ中に拾った若い女が…という、ありがちな怪談話の科学的分析が思わぬ方向へ転がる、非常にリアルな心理ホラー。
相手を見てものを言わなくちゃ。比較的理系の人によく見られるコミュニケーショントラブルです。理論の世界と違って、世間には物差しが人の数だけあるのです。

切れたG線: 老人福祉施設で持て余されているじいさんは、実はかつて一流の音楽家だった。若い日は戦争に踏みにじられ、戦後は急激な世の中の変化に取り残され、それでもG線上で鳴ることしか選べなかった、「山椒魚」的失意の人生。

物いわぬ海: チリ地震による大津波に襲われる三陸海岸の村人たちのエピソード。「白魔」同様に淡々とした実録ふうの文章で、巨大な自然の暴力に直面する人々の姿、劇的に破壊される日常と運命の変化を描き、短編ながら骨太な味わいがあります。
物語としての読み応え充分で、歴史的教訓もある。「稲むらの火」じゃないけど、こういう小説こそ教科書に採ったらいいのにな。
多くの村人を救った「神」は、やがてこの地をあとに異界へ去る。神話のような結末もこころに残ります。


 


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