常世国往還記

本と映画のノート



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

カテゴリー

最新の記事

過去ログ

ブログ検索

FC2ブログランキング

RSSフィード

プロフィール

かもめ

Author:かもめ
読書と映画の鑑賞記録。
日記もちょっとだけ。








ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告

記憶の横溢

2006/05/18(木) 18:48:37

滴り落ちる時計たちの波紋

平野 啓一郎著
文芸春秋 (2004.6)
通常2-3日以内に発送します。


タイトルはダリの絵かな。
おもに記憶をテーマとする作品集です。

白昼: 本のタイトルを含む散文詩的なもの。最後の視覚効果は、朗読を意識したのか。この古典的な手法を持ち出す勇気は買うけど、これをやるには、ことばの絶対音感みたいなものが必要なので、かなりつらいことになっています。
いるんだよね、出てくる言葉がみんな詩になっちゃうような人が。でもそれは、声がいいとか顔がいいとかいうのと同じで、生まれつきの才能だから。難しいですね。

初七日: 題名どおり、お葬式の話。亡くなったおじいさんの記憶に猫がからむ。「白い犬」(読んでないけど)みたいな幻覚?という思わせぶりで引っ張ります。
短編のくせに、どうにもこうにも流れない文章で、ほんとうに参りました。特に難解でもないし、見慣れない言葉が出てくるわけでもないんだけど、おそろしくギクシャクしていて、前に進めない。
「三島を思わせる」という評をあちこちで見かけるのですが、これが作者の地だとしたら、ほんとかよって感じです。(いやあまさか、“法学部生で若くしてデビュー”というところに反応してるわけじゃないよね?)
文体実験なのかなあ? 「体液を失禁」(体液は滲出。失禁するのは大小便では…)とか、「いかにも雑種らしい斑」(どんな斑??)とか、あちこちのほころびに躓いているうちに、道を見失ってしまった。ひょっとして狙ってやっているのなら凄いことですぞ。
戦争の記憶もありきたりで平板、でもそれも確信犯で、死によって拡散していくイメージのメタファーなのかもしれないが。

珍事: 見ている私を見ている。

閉じ込められた少年: いじめと殺意。コピー&ペーストのように、繰り返し同じひとつの想念がぐるぐると回る、回る。
10年以上経ってから、とうとう実行してしまった話も最近ありましたね…。

瀕死の午後と波打つ磯の幼い兄弟: 穴から赤いものが出てくる話の二点セット。洩れ出すのは、運命の悪意のようなものかな。ネガポジが一瞬ののちに反転、茫漠とした救われなさが残ります。

les petites Passions: 自意識と格闘する十代の、何かと痛い記憶五題。うう、ちょっとこそばゆい。

くしゃみ: そういえば、くしゃみしたとたん、あっ、中身が全部でちゃいそうって思うことがありますね。いや、この話はそういうことじゃないけど。そういうことでもいいんじゃないかと思うけど。

最後の変身: 横組を右ページから読ませるという掟破り。目があちこちして超読みにくいです。これも狙いか??
グレゴール・ザムザのひきこもり的解釈――は、倉橋由美子女史もやっていらして、格別目新しくもありませんが、最後に意識上の新展開あり(ただし、客観的事実としてはそのまま)。いわゆる粘着くんの頭の中って、こんな感じなのかなあ。
統合を希求しつつ、単なる情報の一片として、ネット上に散らばっていく意識の残骸。ただの死(たとえば「初七日」のような)より何倍も悲惨です。

『バベルのコンピューター』: このわかったようなわからんような評論は、前の話の続きで、粘着くんが書いたHPの記事かと思いました。ははは。
タイトルが二重カギで囲んであるのは、これがイーゴル・オリッチなるアーティストの作品名、ということになっているからです。この架空(もちろんそうだよね?)の「作品」の評言の皮を被った創作。(だよね? まさかとは思うが本当にあったりはしないだろうな…)
ボルヘスの命題(あれは小説じゃないし!)を証明するための装置の提案です。宇宙の写し絵としてのコンピューターをめぐる、手の込んだ壮大なホラ話。「順列都市」のマリアあたりに管理させてはいかがでしょう(笑)。
ちなみに、作中で指摘されている「バベルの図書館」の誤訳について、一応確認してみたところ、鼓訳岩波文庫版(1996年第7刷。1978年初訳の改訳)では「記号」ないしは「文字」となっているようです。旧訳ではどうなっていたのか、また、もう一つの翻訳はどうなのかは分からないけど、これも、もしかしたらヒッカケ?


えらくクラシックでストレート、眉間に皺の寄った作家かと思えば、「バベル」のように人を食った作品も。多方向に分裂しているのが面白い。次は長編を読んでみます。



 






スポンサーサイト
読んだ本TB:0CM:2
<< 絵のように詩のようにホーム全記事一覧おかしなおかしな未来社会 >>

コメント

こんにちは。ぼくも何か読みましたよ。
両性具有の人が焚刑にされる芥川賞受賞作、蛇の眼を持った少女に魅せられる話…題名が出てきませんが。それが特徴かもしれません。
きっかけは北川透の評論でした。『詩的スクランブルへ』という思潮社の本で、これについては、ぼくのページで紹介します、明日にでも。
平野は、まったく三島由紀夫でも泉鏡花でもありません。まだだれでもありません。でもやっぱりそういうのが現在のあたらしい文学かもしれません。

かもめさんには、もうちょっと長く、説明的に書いてくれればいいのに、と思います。時間がないのかもしれませんが、あまりに知的で才気を感じますが、ちょっと高踏的な雰囲気があります。むちゃくちゃにおもしろいですけど。
Close #bZHQzD8.|2006/05/19(金) 13:27 [ 編集 ]

コメントを頂いていたのに、長らく放置してしまってすみません。ちょいと体調を崩しておりまして、大変失礼いたしました。
Closeさんは、いろいろ本格的なものを読んでおいでなのですね。
私は本を読むのは大好きなのですが、いわゆる文学はシロウトでして、情けないですが、硬いものはちょっと…。書きたくても、長く書くほどの中身がないのが悲しいところです。
ここは、基本的には、自分のための読書録のつもりでやっております。独りよがりで分かりにくい点があるかと思いますが、どうかご容赦ください。
何かもうちょっと、見た方に役に立つことが書けるよう、考えてみます。
そちらも時々のぞかせていただいています。
これからもどうぞよろしくお願いします。
かもめ #-|2006/05/22(月) 17:22 [ 編集 ]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://segrokamome1.blog27.fc2.com/tb.php/243-0423204f

Copyright(C) 2006 常世国往還記 All Rights Reserved.
template designed by 遥かなるわらしべ長者への挑戦.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。