常世国往還記

本と映画のノート



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葬られた過去

2005/05/17(火) 15:42:18




記憶を埋める女
ペトラ・ハメスファール著 畔上 司訳
学習研究社 2002年 
ドイツ人作家によるサイコミステリ。

一時期大評判をとった「朗読者」にしてもそうなのですが、ドイツ人作家の作品には、「戦争の加害者としての心の傷」が影を落としていることが多いような気がします。この小説でも、犯人の父親の、戦時中虐殺にかかわった、加害者としての痛みが描かれています。

ホロコーストの国だから当然といえば当然なのかもしれません。
しかし、日本の文学には、こういう視点て、ほとんどないような気がしますね。

いや、この本のテーマとは何も関係無いんですけど、南京大虐殺の真偽はともかく、中国人があれだけ逆上するのって、その辺にも原因があるのかも、と、ふと思ったもので。


閑話休題。

物語は、どこにでもある平凡な家庭の若い主婦に起きた、精神的な変調の描写で始まります。

ささいな夫婦の行き違い。しかし、妻は異常なくらい深刻に受け止めてしまい、なんと、一気に自殺を決意します。鬱病なのかな?
ところがその矢先、家族水入らずの水辺のピクニックの最中に、彼女は突如果物ナイフをふりかざして、隣でいちゃついていた見知らぬカップルに襲い掛かり、わけのわからないことを口走りながら、男のほうをめった刺しに刺し殺してしまう。

一見して、精神障害者による不条理な「行きずり殺人」だったが、取調べに当たった警部は、彼女のなげやりで非協力的な態度、犯行時に叫んだ不可解な言葉、そして被害者の奇妙な無抵抗(黙って刺されていることはなかったのに)に、何かひっかかるものを感じ、事件の周辺を洗い始める。
そこでまず浮かび上がったのは、犯人コーラの悲惨な生育暦だった。


トラウマで頭が変になって、というありきたりの路線でかなり長いこと引っ張りますが、後半二転三転するのでご安心を。

コーラをはじめ、関係者が意図的についている嘘やごまかし、彼ら自身の勝手な想像と事実誤認、そのなかに細切れに紛れ込んでいる真実と、事件の真相。
万華鏡、というにはあまりにドロドロの世界ですが、真偽とりまぜ、無数の要素がからみあい、そのうちの一つが動くたびに、様相がめまぐるしく反転しつづけます。

真相を知っているものが誰も居ないミステリ。
バラバラの事実の「つなぎ」の役を果たす警部によって、はじめて事件の真の姿が現れてくるという、手の込んだ構成。
長編ですが、それだけのことはあります。作者のたいへんな力技だと思います。

基底に流れるのは、異様な生い立ちに苦しめられたコーラの「普通の人になりたい」という狂おしいほどの願い。
まさに「普通」の人である警部とその家族の、「普通であることの幸せ」ないしは「普通であることの傲慢」が、対照されます。

最後まであまりにも暗くて、グロテスクで、率直に言って好きな話ではありません。
とはいえ、正気と狂気の間を行ったりきたりする犯人の心理を非常にリアルに描いて見事な点、筋立ての複雑さ、処理の鮮やかさ。
抜群のサイコミステリであることに、間違いありません。


ちなみに、解説によると、作者は「女性版スティーブン・キング」などと呼ばれるそうですが、この作品に関するかぎり、いわゆるホラーじゃないです。強いて言えば、まあ、設定がちょっと「キャリー」に似ているための連想なんでしょうか。
でも「キャリー」とは全然違います。オカルトでもありません。
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読んだ本TB:0CM:0
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