常世国往還記

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死ぬことと見つけたり

2006/04/20(木) 12:35:36

梟首の島 上

坂東 真砂子著
講談社 (2005.12)
通常24時間以内に発送します。


19世紀後半のロンドンで、土佐出身の日本人留学生が割腹自殺。前夜に彼と面会していた日本人も、まもなく他殺体で発見され、二つの事件の関連を疑うロンドン警視庁が動き出した。
同じ頃、維新の混乱いまださめやらぬ日本では、自由民権運動が激化。国内統一を焦る明治新政府の厳しい弾圧にあって、思想と表現の自由を求める政治運動は、次第に危険な方向へ追いやられていく。時代に翻弄される人々の中には、多くの土佐人の顔ぶれもあった。
近代国家として出発したばかりの日本と、繁栄の都ロンドン、地球を半周分隔てた対照的な二つの土地で起きた、一見無関係の出来事に、いったいどのようなつながりがあるのだろうか。

…と書くと、いかにも面白そうでしょう。
ところがどっこい。
何がいけないって、まず、登場人物に魅力がない。ステレオタイプで、生きた人間という気がしません。キャラ設定が透けて見えるような感じ。どこかで聞いたようなセリフ多し。

背景にも疑問がありすぎ。
岩神家は息子が家督相続しない件(当時考えられん。土佐では普通なのか?)。
長子の家出(跡取りが、いい年こいてしょぼい理由で。いくらなんでも無責任。この場合、出て行くのは母親のほうでは)。 
家長が死んだってのに、岩神家は暮らし向きが妙に楽であること(息子が二人ともぶらぶらしていられるって、どんな財産家? 店も暇そう)、などなど。  

何かというとすぐ下半身の、それもえらく直截的な話になるのも品がないし(棹、棹とうっとうしい。これって土佐標準なのか?)、兄貴のほうはてっきりホモかと思いました。“性”にこだわりすぎて、なんかかえって不健康な感じです。

それでも多少面白かったのは、民権運動を、尊皇攘夷運動の熾火の再燃と見るあたり。民衆運動じゃなくて、士族の反乱の延長線上なんですね。だから、行き着く先が“いくさ=テロ”になっちゃう。

維新直後に続々と送り込まれた留学生たち(けっこうな人数が向こうに渡っていたのですね)の後日談も、史実として興味ぶかい。尋常に帰国して名を上げたのはほんの一握りで、大半は挫折し、欧州浪人になったり、この話のように死んじゃったりしている。
これだけ情報の豊富な現代ですら、海外に出るとカルチャーショックがあるというのに、本物の西洋人を見る機会さえほとんどない土地から、いきなりロンドンに放り込まれて、正気でいろというほうが無理かもしれません。考えてみると、ずいぶん無茶なことをしたものです。
この小説で読む限り、あまり日常的に武士らしいとは言えない人が「恥辱」などとは、いい気なもんだと思うけど、このような感覚は、きっと実際にあったのでしょう。


 
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