常世国往還記

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アメリカの善意

2006/03/20(月) 22:48:49

おとなしいアメリカ人

グレアム・グリーン著 / 田中 西二郎訳
早川書房 (2004.8)
通常2-3日以内に発送します。


イラク戦争三周年だとか。
混乱は一向に鎮まる気配も無く、事態はいよいよ収拾のつかない方向へと進みつつあるようです。
アメリカが国連の意向を無視してまでこの戦争に突入した理由は、他国が考えるような、9.11の報復(ちょっと相手がずれてるけど)、油田の利権問題など、利己的なものばかりでなく、あのラジー賞受賞大統領が繰り返し主張するように、「イラク国民のため」という気分が、少なくとも一般民衆にはあったに違いありません。そうでなければ、ここまで泥沼化することはなかった。遅くとも、フセイン拘束でアメリカの関与は終わっていたのではないかと思います。

日本の占領政策、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸…そこに経済や政治の力学が働いていることは間違いないにしても、あの大きな、多民族雑居国家で、一部の人間の利害得失から国民全体をまとめることは難しい。
彼らの余計なお世話の動機の一部には、為政者のお題目でなく、ほんとうに無邪気な「理想と善意」がひそんでいるような気がします。

このアメリカの独特な「個性」とその危険を、ベトナム戦争以前に指摘するとは、グリーンはまことに恐るべき目をもった作家です。


舞台は、欧米各国がひしめく大戦後のサイゴン。初老のイギリス人記者ファウラーの元へ、美しいベトナム娘のフォンが駆け込んでくる。愛人のアメリカ青年パイルが戻らないと言うのだ。やがて、フォンが恐れていたとおり、パイルの無残な遺体が発見された。
大人しくて感じの良い、若いパイルと過ごした日々を、ファウラーは追想する。
二人は、かつて良い友人同士だったこともあった。しかし、パイルがファウラーの愛人だったフォンに一目ぼれし、堂々と求愛するに及んで、彼らの関係は微妙なものに変わっていく。

若く、一本気で、「フォンを幸福にしてみせる」と宣言するパイル。しかし、彼の考える「幸福」は、アメリカ人にとっての幸福のかたち。果たしてそれは本当にフォンのためになるのだろうか。
一方、ファウラーはファウラーで、年の離れたフォンを甘やかしているように見えるが、実は何の責任もとらずに、おいしいところをつまみ食いしているだけ。
二人に挟まれたフォンは、混沌とした状況から脱出するために、冷静かつ功利的な判断をするのみ。彼女の心中には、パイルが期待するような甘い愛情や感謝など、みじんも存在しないのだが…。

欧米各国に簒奪され、混乱をきわめる美しいベトナム。その運命を、男女の三角関係に仮託して描いた小説です。グリーンにしては宗教色が薄い話ですが、それでも、宗教的な「善」の本質について考察したと見られなくもない。

発表当時は、「アメリカ批判だ」「いや、イギリス批判だ」と、日本でも論議がかまびすしかったようですが、今読むと、なんとなくどれも的外れですね。
文学は、現状分析のためにあるものではなく、現世的なものから離れて本質を見とおすものだということでしょう。
作者の意図が奈辺にあるかは知らず、現在読む「おとなしいアメリカ人」は、当時のアメリカ批判でもイギリス批判でもなく、直後に起きたベトナム戦争とその結果、ひいては、ベトナム後にも繰り返し起きている、アメリカ主導の紛争のなりゆきを、鋭く予見したものと評価できるのでは。

フォンの国ベトナムは、幸福の権利を自ら手に入れました。
アラブ諸国には、どのような結末が訪れるのだろうか。

 
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