常世国往還記

本と映画のノート



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

カテゴリー

最新の記事

過去ログ

ブログ検索

FC2ブログランキング

RSSフィード

プロフィール

かもめ

Author:かもめ
読書と映画の鑑賞記録。
日記もちょっとだけ。








ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告

四面楚歌

2005/11/07(月) 22:23:25

ヒトラー 最後の12日間

監督 オリヴァー・ヒルシュビーゲル
ブルーノ・ガンツ,アレクサンドラ・マリア(ユンゲ),
ユリアーネ・ケーラー(エヴァ・ブラウン),
ウルリッヒ・マテス(ゲッベルス),
コリンナ・ハルフォーフ(マグダ・ゲッベルス)
2004年 ドイツ

ほぼドキュメンタリーです。フィクションは交えていません。
ソ連侵攻からベルリン陥落までの数日間、地下の指令本部の日常から崩壊までの一部始終が、最後まで司令部にとどまったヒトラーの個人秘書ユンゲの証言によって、明るみに出ました。
この作品も多くを彼女の著書によっており、若い女性秘書を通して見たヒトラーとその周辺が、ストーリーの中心になっています。



ずいぶんと毀誉褒貶のかまびすしい作品のようです。
非難する側は、ホロコーストの怪物・ヒトラーの人間的な側面を描いたことで「これはヒトラーの美化だ」と叩いたようですが、それは違うでしょう。
第三帝国の狂気は、ヒトラー一人のものではなかった。それを支えた人間が大勢いたという点で、たとえば異常者の起こす猟奇殺人などとは決定的に異なっています。ヒトラーにせよ、ゲッベルスにせよ、奇矯な怪物ではなく、人間だから恐ろしいのです。
秘書をいたわり、家族を愛し、子どもの頭をなでる。同じ人間が、同じ手が、平然と何万もの人びとを虐殺するから、ホロコーストは恐ろしい。
ヒトラーを特殊な怪物と見なすことこそ、ナチの凶行を歴史の彼方に風化させることに他ならないのではないでしょうか。

礼儀正しい隣人にも、気のいい友人にも、そして私たち自身にも、いつこのような怪物的な部分が芽を出さないとも限らない。だからこそ私たちは、歴史の知識としてではなく、自分自身の問題として、このことを考え続けなければならないのだと思います。

この作品では、ヒトラー最晩年の日々をたどる一方で、熾烈な市街戦に曝され、崩壊していくベルリンの地獄図が、冷酷なまでのリアリズムをもって描き出されます。
たたみかけるようなソ連軍の猛攻に、情報が追いつかず、混乱して思考停止状態の地下司令部、ちぐはぐな命令に右往左往しながらどんどん死んでいく兵士や市民、建物も秩序もズタズタになっていく都市。

これが敗戦。

ドイツは、ヒトラーという一人の指導者が動かし、日本では軍部という集団が動かしてはいましたが、結局戦争の最後は同じような状況を呈していたのではないでしょうか。

戦況といわず、ホロコーストといわず、責任を「怪物」ヒトラーとその側近だけに押し付けてしまえば、一般ドイツ市民は精神的に楽なはずです。「自分たちはだまされていた」「知らなかった」「自分たちは関係ない」
しかし、この作品は、そうはしない。

「市民がナチを選んだのだ」というヒトラーのせりふは、責任逃れのようでもありますが、一面真実です。彼は一般市民に選挙によって選ばれた"代表"なのですから。彼の夢である第三帝国と反ユダヤを選択したのは、他ならぬ市民でした。
ユンゲ自身も「私だって責任が無いとは言えない」と言っているし、最後にユンゲと手をたずさえて脱出する幼い少年すら、まったくの無垢とは言いがたい。

帝国崩壊によって、市民は結局その「誤った選択」の報いを、充分すぎるほど受けたということなのでしょうが、それにしても、もう一つの敗戦国である日本には、こういった視点がほとんど見られませんね。
終戦特集が組まれるたびに、なんだかモヤモヤして気分が晴れないのですが、悪玉=軍部、被害者=市民や兵士、と、それだけでいいのでしょうか。

もちろん、当時の日本はドイツほどの民主主義国家では無かった。しかも、軍部が政治を握ってしまっていたのだから、開戦や侵略の決定に市民が直接関わる機会はなかったかもしれない。それでも、開戦前後の強硬姿勢を、国民の大多数が旗を振って歓迎したことは間違いない。

いや、戦前・戦中派全員に反省しろと言っているわけではありません。
そうではなく、どうして一般市民が戦争賛美気分になってしまったのか、軍部にだまされたというなら、どうしてだまされてしまったのか、だまされないためには、何をどう気をつけたらよかったのか、そこをよく考えないと、単純に平和バンザイ、戦争反対では、同じことがいつかまた起きるんじゃないかと思うのですが。
既に起きかかっているのかもしれないけれど。


地味な映画にしては珍しく、地元の映画館にかかりました(といっても、一日一回のみの上映ですが)。
どうせガラガラなんだろうと思ってタカをくくっていたら、半分以上席が埋まっていました。
この館の通常のレベルからすると、大入りといっていいくらいです。レディースデイ(女性割引あり)だから女の人が多いのは当然、といっても、他に女性向きの映画もかかっているのに、戦争物にこれだけ入るのは珍しいし、真昼間なのに若い男の子(大学生?)がかなり来ていたのはびっくりでしたね。

この映画は、おそらくヒトラー関連映画の一つのスタンダードとして、長く残る作品になるでしょう。必見です。
DVDで見ても良いけれど、市街戦の臨場感など、映像的にも素晴らしいので、機会があれば劇場で観たほうが良いでしょう。
スポンサーサイト
見た映画(DVD)TB:1CM:0
<< 鬼子母神 (ヒトラー雑感)ホーム全記事一覧不治の病 >>

コメント
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
『映画『ヒトラー最期の12日間』(Der Untergang)感想B面』
以前にも掲示板で話題になりましたが。 過日、アントニー・ビーヴァーというイギリスの軍事史家が、ベルリン最終戦についての超力作ドキュメンタリー作品を発表して大いに評判となりました。単なる事件の記録にとどまらず、この戦場におけるドイツ側、ロシア側それぞ
~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録|2005/11/09(水) 07:07

トラックバックURLはこちら
http://segrokamome1.blog27.fc2.com/tb.php/150-053960d2

Copyright(C) 2006 常世国往還記 All Rights Reserved.
template designed by 遥かなるわらしべ長者への挑戦.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。