常世国往還記

本と映画のノート



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カテゴリー

最新の記事

過去ログ

ブログ検索

FC2ブログランキング

RSSフィード

プロフィール

かもめ

Author:かもめ
読書と映画の鑑賞記録。
日記もちょっとだけ。








ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告

ゾルゲ事件―尾崎秀実の理想と挫折 (book)

2004/05/19(水) 17:39:22

ゾルゲ事件―尾崎秀実の理想と挫折
尾崎 秀樹著 中公新書 1963年

ソビエト共産党のスパイ、リヒャルト・ゾルゲが、ドイツ政府関係者を装って日本に潜入、日本政府に顔のきく隠れコンミュニストの尾崎秀実を通じて入手した情報を、ひそかにソビエトへ流していた。
警察側は、怪電波の存在を察知してはいたものの、その正体はどうしてもつかめずにいたが、別件で逮捕された共産党員伊藤律が、身の安全の確保と引き換えに官憲のスパイとなり、個人的にも親しかった尾崎を売って、ようやく彼らの活動が明るみに出ることになった。
日本の敗色が濃くなりつつあった大戦末期、尾崎とゾルゲは終戦を待たずに処刑、その他の関係者の多くも獄死。
終戦後の混乱や共産党内部の隠蔽などのために長く不明となっていた事実関係や資料を発掘し、尾崎とゾルゲの真の目的に迫ろうとする労作。




著者は、尾崎秀実の異母弟。事件発覚時はまだ中学生でしたが、戦時中はもちろん戦後も長く「売国奴尾崎の弟」として迫害を受け、当局の厳しい監視の中で多感な少年期を過ごしました。文字通り血を吐くような生活のなかで、「なぜ兄はあのような行動をとったのか」と問い続け、兄の実像を探り続けた日々が、本書となって結実したものです。
この強烈な執筆動機が牽引力となって、最後まで一気に読ませてしまう気迫あふれる文章です。

ただし、戦後問題になったという、「ゾルゲ事件は官憲のデッチ上げ」説の真偽は、1960年代時点での著者にとっては大問題だったとしても、半世紀以上たった今日、さしたる意味を持たなくなってしまいました。
各地に広がった共産思想も革命も、変質しました。思想と行動の一致が必然だった時代の人尾崎が現代を見たら、どのような感想を持ったでしょうね。

歴史上の煩瑣な諸条件を取り除けて、事件の本質だけを見た時に感じるのは、国家と個人の距離の難しさです。尾崎もゾルゲも、当時共産思想に共鳴した多くの人びとがそうであったように、理想を求める善意の人だったのでしょう。しかし、尾崎の理想、ゾルゲの理想が個人的に如何にすばらしいものであったとしても、いざ行動するさいには、個人はもっと大きなものの一部分とならざるを得ず、結局は彼らの目指すものから逸れてしまいかねない。デッチ上げにしろそうでないにしろ、結局のところ、彼らの理想主義も行動力も、個人を離れた大きなものに、持ち駒の一つとして利用されただけではなかったかと思います。

ひるがえって現在、イラクの人質事件で、被害者となった人たちが非難されるという事態が起こりました。これも、国と個人の問題に帰結するかと思います。
人質となった人たちも、本質的には善意の個人でしょう。個人としての行動は、自由であるべきです。けれど、一旦事が起これば、たちまち彼らは日本国民の一人となり、望むと望まないとにかかわらず、多くの人々を巻き込むことになってしまいます。
だから、このような場合に個人として何一つ行動すべきではないのか。それも違うような気がします。
国家をひきずる個人と、個人を規制する国家。意識しないで済めば幸せなのですが……。
スポンサーサイト
読んだ本TB:0CM:0
<< 順列都市 (book)ホーム全記事一覧世界の中心で愛を叫ぶ (book) >>

コメント
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://segrokamome1.blog27.fc2.com/tb.php/15-793601b1

Copyright(C) 2006 常世国往還記 All Rights Reserved.
template designed by 遥かなるわらしべ長者への挑戦.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。