常世国往還記

本と映画のノート



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読書と映画の鑑賞記録。
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格差雑感

2009/02/11(水) 23:42:49

教育格差絶望社会 (洋泉社ペーパーブックス)
福地 誠
洋泉社 (洋泉社ペーパーブックス) 2006年


巷で話題の「格差の拡大」について、教育の側面から調査・分析したもの。
えげつないタイトルの割に、中身は穏健。ご自身のお子さんの中学受験体験が執筆動機となったようです。

目を引くのは、裏表紙の著者略歴。
開成中学を成績不振で退学、平凡な都立高校を卒業後、東大入学というと、いかにも華々しいリベンジのようですが、そこでまた勉強熱を失って…とまあ、表に回ったり裏に回ったり、実にコメントしにくい経歴の持ち主で、現在も専門分野のはっきりしないフリーライター。
こういう、いかにも学歴否定しそうな経歴のお父さんの子供でも、塾へ通って中学受験する時代なんですねえ。

最初に、格差社会の現状、続いて、家計における教育費の上昇と、かけた金額の高低によって、子供の将来に差が出てくるという、タイトル通りの主張を述べています。
読ませるのは、著者の経験もふまえた前半。主に足立区の現状を引いていて、なるほどと思わせます。
しかし、本書に書かれているような極貧家庭が、最近になって増えてきているという本書の記述は本当なのでしょうか。

少なくとも、私が子供の頃、周囲にはいつも一定数このような人々が居て、親は生活で手一杯、子供の勉強を見るどころじゃなかった。でも、そういう家の子が、どんどん落ちこぼれていったかというと、そうでもなかった。
小学校でも中学校でも、出自にかかわらず、多くの子供は普通にできたし、中には平均よりかなり上の子もいました。家庭の経済状況と、成績の良し悪しは、必ずしも比例してはいなかったのです。
ところが、四、五学年ほどあとから、様子が変わってきます。
分数の計算や、ひどいのになると四則演算がまともに出来ない、いわゆる「落ちこぼれ」が出てくる。それまで、知能に障害がない限り、どんな子でも出来ていたことが出来なくなったというのは、つまり学校での教育内容が変化したのではないかと私は考えています。

具体的に言えば、小学校教育から「定着」がなくなりました。
「復習は家庭でやらせてください」と言われる。それまで居残りさせてでも出来るようにしていたのを、各家庭に丸投げする。宿題のチェックが甘くなる。あるいは宿題が出ない。わかっていなくても出来ていなくても、そのままになってしまう。テストは○×と点数がついて返されるだけで、間違えたところのフォローをしない。作文は書かせっぱなし。
最終的には、到達度を示す成績表がなくなります。子供の学校生活を、日ごろから細かくチェックしない限り、子供の学力レベルがわからなくなってしまいました。

実は過渡期には、家庭の経済力よりも、教育への関心の大小のほうが、子供の学力に影響していた時期がありました。当時「インテリは出遅れる」というフレーズがありまして、高学歴の親ほど危機感に乏しく、子供の教育に対する手の打ち方が遅い。自分の成功体験に照らして、「そのうち勉強するようになれば、成績も上がるさ」なんて、学校任せで呑気に構えていると、子供は基本のキでつまづいていて、気が付いたときには、既に挽回が困難になっていることもありました。

しかし、じきに、余裕のある家庭では、家庭教育の体制をととのえるなり、塾や家庭教師を手配するなりして、事前に対策を打つのが当たり前になります。いわゆるダブルスクールの一般化。この頃から、家庭環境や親の経済力が、子供の学力に直接反映するようになったのではないでしょうか。
一方、小学校では顕在化しないが、実は基礎の出来ていない落ちこぼれの子が中学に上がると、授業に全くついていけない。「お客様」状態の彼らは、反抗期も手伝って、自棄になって暴れだし、公立中学が荒れ始める。
あんな学校へは出来ればやりたくないというので、中学受験が普及し、教育はますます金のかかるものになります。

実のところ、一部の能力の高い子供は、自力で理解し、自力で学習することができるので、「定着」などなくても困りません。
公立の「トップ高校」の生徒の中には、少なからずこのような者が含まれていますが、彼らの将来が、家庭の経済状況によって左右されるかといえば、それほどでもないのです。学力の高い生徒は、少子化も手伝って、国公立大学進学に限らず、奨学金なり、特待制度なり、安上がりで有利な進路をいろいろと選択できます。実績ほしさにタダで入れてくれる塾・予備校すらあります。
「学歴を金で買う」状況は、上位層にとっては、著者が言うほどではありません。(「鉄」に行かなくてはなどというのは、ほとんど都市伝説です。あれは非常に特殊な塾で、好みが分かれます。)

現在都立高校などで熱心にやっている改革は、単に私立中学に流れていた優秀層を呼び戻すだけで、公立小中学校教育における経済格差問題の解決にはつながらないでしょう。
公立高校から東大に何人入るなんていうのは、正直どうだっていいので、問題の大元は、公立小学校での経済格差と学力の関連性にあります。
本書にあるように、校区内の経済状況と平均学力レベルには、明らかな相関関係が見られる。それは、現在の初等教育を何とかしない限り、公立高校の進学実績がいくら上がっても、中学受験率が減っても、おそらく改善はしないでしょう。
いやな言い方ですが、いわゆる「下流スパイラル」を解消することも、不可能と思われます。


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駆除される人類

2009/02/01(日) 23:26:18

深海のYrr 上 (1) (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)
フランク・シェッツィング 北川和代訳
早川書房 (ハヤカワ文庫) 2008年

南米の沿岸域で、原因不明の小型船遭難事件が相次ぐ。
同じ頃、地球の反対側、ノルウェーの海洋生物学者ヨハンセンのもとに、海底のメタンハイドレート採取業者から、新種のゴカイが届けられた。微生物を主食とする動物には不釣合いな、大きな顎を持つ珍種に、ヨハンセンは首をひねる。いったい、この顎はなにをするためのものなのだろうか。
一方、カナダ西岸ではホエールウォッチングツアーがクジラやシャチに襲われ、多くの死者を出すという悲惨な事件が起きた。ツアーの監修をしているクジラの研究者アナワクは、クジラたちの行動に明確な敵意を感じて衝撃を受ける。さらにフランスで、猛毒の微生物に感染したロブスターが破裂し、調理人が死亡した。病原体は水道水に侵入し、感染が爆発的に拡大していく。
はるか昔、生命をはぐくみ、人類に変わらぬ恵みをもたらしてきた海が、唐突に牙をむいたのだ。次々とやってくる「海からの危難」に、世界はなすすべを知らなかった。


生物・地学系の新知識を軸にしたSFパニック小説。
この手の話は故マイクル・クライトンの独壇場かと思っていましたが、意外にもドイツの、しかも全く畑違いの大衆作家の手になるものです。
各巻500ページ超の大作ですが、大事件・大惨事の連続、巻ごとに二つか三つの山場があり、緊張感がゆるむことなく、最後まで一気読みです。

素人さんとはいえ、かなりがっちり調べて書いていますので、知識面でも読み応えがあります。ただし、下敷きになっている研究成果を事細かに説明しているにもかかわらず、グラフ・数値等の資料を捏…もとい、創作できないところが、クライトンとの最大の違いか。地図くらいは入れてくれてもよかったのにな。
基本はベルヌやウェルズをなぞったといってもいいほどの正統派SF小説に、現代風の手に汗握る大仕掛けなアクション&サスペンスを加味し、ラヴクラフトふうの薄気味悪い海洋ホラーで味付けという、サービス満点のエンタテインメント。
欧米ものらしく聖書のメタファー(相当皮肉のきいたキリスト役ですが)へと収束し、小説的な小難しさも全くありません。

登場人物が多いこと(人物一覧と首っ引き)と、あくまでもストーリーが主体で、これといった主人公はいないことくらいが要注意事項でしょうか。
主役級の人物を惜しげもなく捨てていきますので、特定のキャラクターに思い入れるとがっかりします。人間ドラマとしては淡白ですが、そこにこだわっていたら分量が倍になって、スピード感も半減してしまったでしょう。パニック度からいって、主要人物が誰も死なないというのは不自然ですし、展開上しかたありません。
誰が残るのか、誰も残らないのか、結末が全く予測できませんでした。

クジラやイルカの保護、乱開発や不法投棄が引き起こす諸問題などの話題から始まりますので、これはエコ小説かと思いきや、後半一転、正反対の方向に走り出してびっくり。
人間の描くものは人間の文化を反映するというお約束の通りに、人類をおびやかす至高の存在「イール」は、自然をよりよく支配しコントロールするという、西欧社会の伝統的な命題の反映です。
それと関係するのかどうか、この作者は、アジア人嫌いと見た。一見国際色豊かな研究チームも、よく見ると欧米以外はエスキモー・インドなど、英米に植民地化されたことのある地域の人だけなんですよね。
話がクジラがらみなので、捕鯨国日本を排除するのは仕方ないとしても、中国あたりはまぜてもよかったのでは。共産主義と帝国日本は、ドイツのトラウマなのかしら。
そのへんが、この作者の限界かも、と思いました。


映画化予定だそうですが、二時間に収めるには話が複雑すぎるので、かなり端折った内容になるでしょう。
映画の脚本が原作を超えることはないと思いますが、うまくいけば映像的には、「パーフェクト ストーム 」どころではないスペクタクルです。これは断然、劇場で見るべきでしょう。

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