常世国往還記

本と映画のノート



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怪奇ミステリ・アンティーク

2006/09/27(水) 17:22:50

中島 河太郎 編
立風書房 (1991/06)

主に大正期の人気雑誌「新青年」に掲載された短~中編小説のなかから、ホラー・ファンタジーものを中心に編んだアンソロジー。

上海された男(谷譲次): 船乗りのミステリ。“上海する(される)”という隠語がポイント。
お・それ・みお(水谷準): 夭逝した恋人を文字通り天国に送る話。
瓶詰奇談(稲垣足穂): ゴーストバスターズ。タルホはあんまり読んでみたくない作家なので、敬遠しておりました。これは全然ボーイズラブじゃなくて、洒落たユーモア小説です。わりと好き。冷暗所で長期保存可能というあたりがツボでした。
可哀想な姉(渡辺温): 誰のおかげで大きくなったと! 本当にひどい。
ジャマイカ氏の実験(城昌幸): 空も飛べるんジャマイカ。迷惑な訪問者の話。
押絵の奇蹟(夢野久作): この作者らしい奇談。遺伝学的には無理ですが、きれいなメルヘンとして。
闘争(小酒井不木): 二人の天才学者の頭脳対決。あまりに剣呑な科学観で、とてもついていけません。狩尾博士の迫力は、ちょっとハンニバル・レクターを思わせます。
押絵と旅する男(江戸川乱歩): 乱歩の怪談。押絵といえば、私は羽子板のお姫様くらいしか思い浮かびません。当時は絵柄も豊富で、もっとリアルな感じだったのでしょうね。
偽眼のマドンナ(渡辺啓助): 義眼フェチ。病気ですな。
せんとらる地球市建設記録(星田三平): こんなところで意外にもSF。せんとれあ…じゃなくて、映画の「28日後」みたいなはなし。
蜘蛛(米田三星): 作者はお医者さんの兼業作家だそうです。医学用語が出てきますが、今日的な感覚では、かなり差別的な内容が含まれております。心理ホラーです。
鮫人の掟(橋本五郎): 海底の殺人事件。犯人は海の魔物か…。道具立てが新しいですね。
俘囚(海野十三): 変態です。まちがいなくヘンです。書いてる作者も変だと思います。
鉄仮面の舌(小栗虫太郎): ゴシックホラー調というのでしょうか。雰囲気はあるのですが、読みにくいこと読みにくいこと。“ドイツ語フランス語、英語だって得意よ~”は分かったから、ゴテゴテの外来語、勘弁してほしいです。しちくどい文章の割には、しっかりした推理物なのですが、なんにしろ疲れた。
かいやぐら物語(横溝正史): 今まで横溝正史が名文家だと思ったことはありませんでしたが、前のに比べたら、まあ何て流麗な文章でしょう! かいやぐらは蜃気楼のこと。海辺の幻想小説です。
深夜の音楽葬(妹尾アキ夫): 瀕死の床にある娘の願いが、盲目のヴァイオリニストの心に、生まれて初めての火を灯したが…。薄幸の二人の哀話。と、酷いオチ。
(大下宇陀児): 早熟な天才児の転落。うーん、奈良の放火殺人みたいな展開になるのかと思いましたが、主人公の少年のぐれっぷりは、いっそ爽快です。それにしても、七つで九九ができる程度で神童…。公文も塾もお受験もない時代ですからねえ。幸せねえ。
黒い手帳(久生十蘭): 留学生向けの安アパートに住む、貧しい住民たちのせせこましい悪意・嫉妬・欲。上下階の変人たちにサンドイッチになっているだけかと思いきや、一種の片棒をかつぐ語り手も凄い。
親友トクロポント氏(三橋一夫): ちょっとダンセイニふうのファンタジー。近所にこんな変人がいたら楽しい。連載ものの第一話だそうです。

 
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変態たちの昼下がり

2006/09/26(火) 18:24:59

レッドドラゴン
レッドドラゴン(cinema)
監督 ブレット・ラトナー
アンソニー・ホプキンス エドワード ノートン
レイフ・ファインズ ハーヴェイ・カイテル
エミリー・ワトソン
2002年 アメリカ
posted with amazlet on 06.09.26
“食人鬼”ハンニバル・レクター逮捕で名をあげたFBI心理捜査官グレアムは、既に職を辞し、家族とともに田舎で平和な暮らしを楽しんでいた。そんな彼のもとに、突然かつての同僚クロフォードから連絡が。手詰まりになった連続一家惨殺事件の捜査に協力してほしいというのだ。
クロフォードの目的は、心理捜査に抜群の才能を持つグレアムの現場復帰のみならず、彼を通じて、犯罪心理学の天才であるレクター博士の協力をあおぐことにあった。今や医療刑務所の奥深くにつながれ、無聊をかこっている人食いレクターは、非常に気難しい男で、彼が唯一認めているグレアム以外に、説得できる者はないと考えたのだ。
グレアムは、かつてレクターと繰り広げた壮絶な戦いのトラウマにおののきつつ、不承不承に、再び彼と対峙するのだったが。


3号が「羊たちの沈黙」を見てない(子供だったので見せなかった)というので、事のついでに見そびれていたのを借りました。
'86の「レッド・ドラゴン -レクター博士の沈黙-」(もとのタイトルは「刑事グラハム」)のリメイク。86年版はタイトルからして割としょうもないB級ですが、このリメイク版はキャスティングにお金をかけて、それなりの出来栄え。特に、エドワード・ノートンのグレアムは、はまり役ですね。神経質で頭はいいけど、レクター博士好みのナイーブな弱さがあって、間違っても武闘派ではない感じがよく出ています。原作の設定とは多少変わっているものの、ダラハイドのレイフ・ファインズもいいですね。

しかし、この作品の欠点は、まあそれが目的で撮り直したのだから当然なのですが、ホプキンス=レクターの話に焦点を合わせようとしすぎたために、メインストーリーのダラハイドの物語がおざなりになった点です。せっかくレイフ・ファインズに変態役を振ったのに、もったいない使い方。

確かにホプキンスのレクターは相変わらず魅力的?ですが、このありあまる存在感に“さわりだけ”触れて、読者の飢餓感をあおるところが、原作の奇妙な味わいだったのに、本作では思う存分見せまくり。ために話が分裂して、何がテーマなんだか、よくわからなくなってしまいました。この点では、グレアムに終始焦点を合わせた旧作のほうが、構成上まさっていると思います。

レクター・シリーズ第一作として、(先に出来た)後続二作品とつながるよう、共通の脇役にはできる限り同じ俳優を使うなど、かなり気を遣っています。個人的に気に入ってるチルトン博士は、同じ人でうれしかった。反面、「羊たちの沈黙」でもメインキャラの一人であるクロフォード役が変わっちゃってる。まあ、仕方ないか。

 
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わんこのために

2006/09/21(木) 16:44:41

犬の加減が悪いです。
もう年なので、とても心配。
また元気になってくれるのかなあ…。



著者は学者ではなく、動物文学の人。
本書は自身の飼い犬に関する文章を中心にしたエッセイ集。
ジャーマン・シェパードの繁殖にまつわる苦心や、多くの飼い犬の中でも、飛び切りの愛犬についての、興味深いエピソードなどがまとめてあります。

大正~昭和初期といえば、野犬も多く、飼い犬といってもほとんど放し飼い同然、今でいうマナーもケアもあったものではなく、人間の残飯で露命をつないでいた時代に、ブルジョア家庭では、こんなに贅沢に、大切にされている犬もいたのですね。
現代の、我々のような庶民に至るまで浸透しているペット文化が、社会的な余裕の産物であることに感慨をおぼえます。
と同時に、今では飼い犬なら、雑種犬ですら罹患の珍しいフィラリアで、大事のお犬様をしばしば失っていること。そういえば、私の子供の頃までは、狂犬病が時たま発生していたし、ジステンパーとフィラリアは、ごくありふれた犬の死病でした。医学の進歩と衛生・予防の普及って凄いですね。

これも読もうと思ってたんだ。

愛犬王 平岩米吉伝(book)
片野 ゆか 小学館 (2006/04/01)

愛犬王ってのは、ちょっと大げさかと思いますが。小学館らしいタイトル(笑)。



ダーシェンカ あるいは子犬の生活
カレル チャペック 保川 亜矢子訳
メディアファクトリー (1998/12)

「ロボット」の発明者?としても有名な、チェコの作家チャペックによる、かわいい愛犬物語。挿絵もすてきです。
今手もとにないのでうろ覚えですが、同腹の兄弟犬の中から、気に入ったのを一匹だけ残したのが主人公のダーシーで、あとは全部下男に“処分”させた、というようなことが前書きに書いてあったと思います。犬好きでも、犬と見ればどれもこれもベタベタ可愛がるというわけではなかったんですね。

欧米では、愛犬家といっても、なかなかドライです。あくまで人間の都合が優先です。しつけも厳しい。日本のようにセンチメンタルなペット愛は少ないのでは。
今の飼い犬が若い頃、繁殖にかけてみようかという話もあったのですが、イギリス人のブリーダーが書いたものに、
「基本的に素人は手を出してはダメ。どうしてもやるなら、生まれつきの病気や遺伝病の仔、犬種スタンダードから外れる仔は、万一繁殖されると犬種が崩れるので、必ず処分すること。それが出来ない人はブリーディングの資格なし」
とあるのを読んであきらめました。雑種犬ならこの範疇ではないのでしょうが、一応にしろ血統書付きは、責任があるかなあと思って。

先ごろ話題になった坂東真砂子さんの子猫殺しですが、“処分”という点から考えれば、(一昔前の)欧米的感覚では、特に珍しい話ではないのかも。しかし、殺すのはまだしも、命の重さなどと言うなら、ちゃんと埋めてやってくださいよ。
崖からポイ捨てやめましょう。川に流すのもまずい。衛生上も問題あります。

 
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正気と狂気のあいだ

2006/09/19(火) 18:20:15

さて、こちらは拘禁うんぬんではなく、犯罪の責任能力そのものに関する精神鑑定の話です。


関係者への影響に配慮し、主に海外、国内では戦前の事件に限ってあります。

第一章は、レーガン大統領暗殺未遂事件の犯人ヒンクリーの精神鑑定が、裁判そのものや社会に対して与えた影響を述べたもの。日本でも増えつつある劇場型の犯罪の問題や、近く実施される陪審員制について、何かと考えさせられます。

第二章は、詐病について。といっても、減刑を狙って故意に病気を装うありがちなケースではなく、精神鑑定を受ける過程で、鑑定人と対象者の間で、知らず知らずのうちに病気が“創作”されてしまうというもの。主に鑑定人側の面接態度に関する問題です。
これは、精神鑑定に限らず、一般の医師と患者にも起こることではないかと思います。今話題のLDやADHDなども、本当に深刻なものから、「そう言われてみれば…」というどっちつかずのケースまで、かなり開きがあるのではないでしょうか。
ダニエル・キースの作品で有名になった、ビリー・ミリガンの多重人格障害などが例に上がっています。

第三章は、歴史の教科書にも載っている、明治二十四年のロシア皇太子襲撃事件
現代の精神医学から見た犯行の背景とともに、このときすでに医師による精神鑑定が行われ、裁判において重要な証言として採用されるという、司法史上画期的な事件だったことが述べられています。
江戸期以来の、「乱心者」の犯行に対する伝統的な考え方や扱いに関する話も面白かったです。

第四章は、横溝正史の小説「八つ墓村」のモデルとして有名な津山三十人殺しと、ドイツの小学校教師ワーグナーの無差別大量殺人事件をめぐる話。
津山事件の犯人は犯行後自殺してしまったので、鑑定は事後の推定ですが、ワーグナーは病院に収容され、高名な精神病理学者、ガウプ教授による精神鑑定を受けます。ガウプはこのケースに夢中になり、ワーグナーをテーマに書いた論文が彼の出世作となりますが、医師と患者との長期にわたる親密な接触は、双方にとって、まるで仕事のパートナー同士のような奇妙な共感をはぐくみ、医師が患者の精神状態に影響をおよぼすのはまだわかるとしても、医師のほうでも、精神的に患者の影響を受けてしまうというのは驚きです。
津山事件の犯人都井と、ワーグナーの症例の共通点、また、第二章とは少し違った意味での、医師対患者の関係の難しさが語られます。

第五章は、フランスの著名な哲学者、ルイ・アルチュセールの妻殺しについて。アルチュセール(著作の翻訳も研究書もいろいろあります…)もこの事件も私には初耳で、まったく恥じ入るほかはありませんが、理性の塊のような優秀な知識人が、無意識のうちに就寝中の妻を絞殺するという、非常に特異な事件だったようです。
あー、学者の犯罪といっても、犯行時に意識が無いという点で、例の鏡の先生とは事情が違いますので。念のため。
鑑定により精神病患者と認定された彼は、精神病院に収容され、以後公的な場で発言する機会を奪われたまま、10年後に死亡しますが、この件のもう一つの特殊性は、死後に発見された遺稿の中で、アルチュセール自身が、事件について語るとともに、鑑定結果によって公判が開かれなかったため、法廷での弁明の機会を奪われたと述べている点です。
事実、遺稿や、生前の夫妻を知る人々の話を総合すると、事件の別の様相が見えてきて、本来は精神病者の人権を保護するための精神鑑定が、逆に、権利を侵害する場合もありうるのではないかとの疑問がわいてきます。


狂気の犯行、といっても、狂気には無数の種類や段階があり、通常の治療と違って、何かしら当座の「結論」を求められる鑑定の難しさ、その「結論」が一人歩きする怖さ、また事件の見方を規定してしまう恐れなど、精神鑑定にまつわる種々の困難が、具体例に沿って、術語を抑えた平易な文章で書かれており、読み物として興味深いだけでなく、たいへん勉強になりました。
精神鑑定って、精神的にきつそうだなあ…。

 
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地下鉄サリン裁判

2006/09/19(火) 18:13:24

オウムの松本被告死刑確定に関して、精神鑑定にあたった加賀乙彦氏の見解が印象的でした。
被告の精神的な混乱が「詐病である」とする検察側に対し、そうではないと主張しているのですが、これが必ずしも弁護側にくみするものではなく、「拘禁反応」としているところが面白いですね。

10年以上も未決囚のまま、狭いところに閉じ込められていたから、ストレスでおかしくなっちゃったんだという。
能力の有無を言っているのではなく、現状では公判に耐えない。だから、現在の精神症状を治療した上で、あらためて責任を問うべきではないのか、とおっしゃりたかったのだと思いますが、結局裁判所は「今は裁判できない」という点だけを酌んで、抗告棄却の措置をとったようなかたちになりました。

どういう経路をとるにせよ、結論は同じなんだから、とっとと片付けてしまうというのも一つの考え方ではありますが、あれだけの大事件を、うやむやで終わらせてしまって大丈夫なのか、再発防止のための分析は充分に行われているのかとの疑問が残ります。
アーレフの大捜索もいいけど、オウム関連だけが宗教犯罪の温床とは限りません。信教の自由と法の執行の線引きをどうするのか、きちんと議論はなされたのでしょうか。

拘禁反応については、加賀氏に、素人にも読みやすい解説があります。

 死刑囚の記録

これは、死刑囚へのインタビューを記録・分析した著作です。
人権上、また人間の精神の本質をさぐるにあたっても、非常に意義のある研究ですが、何ともつらい作業をよくぞ、と思います。先般読んだ「人間の暗闇」にも通じるところがあります。

 
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既定される世界

2006/09/17(日) 15:29:59


新聞コラムを集めた本で、体系的なメディア論ではありませんが、読み物としては面白かったです。
面白そうな書名がたくさん上がっているので、今後の本選びに役立ちそうです。大学の先生はありがたいですね。

この本で見る限りでは、これまで主として社会学、歴史学、あるいは心理学や統計学、言語学などの一部で、ばらばらに論じられてきたものを、メディアをテーマに再編成した分野のようです。総じて、個々の分析のオリジナリティというよりは、まとめ方の妙でしょうか。
故キヲ温ネテ新シキヲ知ル。おや、まさに冒頭の里山文化論ですね…って、意味が違うよ。


 
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じいちゃん、シッカリ

2006/09/16(土) 15:39:29


ウッドハウスのロード・エムズワースものの短編集。
一応若者層のお話であるバーティー・ジーヴスものの登場人物たちと違って、本編の主人公エムズワース卿(伯爵、名前はクラレンス)は、リタイアしたお年寄り。郊外の古いお屋敷で、執事のビーチはじめ、有能なお家来衆(使用人)にかしずかれながら暮らしています。
家畜の飼育とガーデニングを生きがいとし、伝統と自然と静謐をこよなく愛する彼の平和を乱すのは、現代の申し子である次男フレディと現役ばりばりの妹たち、また、折あるごとにどこからともなく湧いて出る若い甥姪と、彼らのパートナーたちです。

もはや崩れ去った、古きよき封建制の残滓である老伯爵が、現代生活の荒波に曝されて(?)右往左往しながらも、案外楽しくやっている様子が、例によって面白おかしく描かれます。
う~ん、最保守派は、かえってラディカルに通じる、というか、このじいさん、意外と子供や若者に人気がありそうですね。

エムズワースシリーズ10編(うち一編は、次男フレディが主人公)と、特別収録作品として、別シリーズの「天翔けるフレッド叔父さん」を採録。
こちらは、名前は同じでも次男のフレディとは無関係で、ふにゃふにゃしたエムズワース卿とは対照的に、元気で迷惑なお年寄りの話です。

どれも水準以上のユーモア小説で楽しめますが、しかし、一番笑ったのは、巻末付録のA.B.コックス(アントニイ・バークリー)による「文体の問題、あるいはホームズとモダンガール」。
シャーロッキアン並みにホームズファンだったウッドハウスに敬意を表して(?)、“もしウッドハウスがホームズを書いたら”というテーマで、ウッドハウススタイルの偽ホームズものを書いているのですが、これが傑作! バークリー、さすがにプロですねえ。
翻訳もよくできていますが、機会があったら、是非原文で読みたいものです。

こんなものも見つけました。

PGWS(ウッドハウスソサエティ)のホームページ

web上で読めるテキストもいくつか公開されているようです。

 
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愛と誠

2006/09/05(火) 17:04:54

ブライトン・ロック
グレアム・グリーン著 / 丸谷 才一訳
早川書房 (2006.6)
通常24時間以内に発送します。

海辺の行楽地ブライトンで、ブン屋のヘイルが死んでいるのが見つかった。
検死の結果は自然死。しかし、たまたま死の直前まで一緒だったアイダは、彼が何者かを恐れ、死を予感している様子を目にしていた。ひょっとしたら自殺か、あるいは…。だが、何故か誰も彼女の話に取り合ってくれない。義憤にかられたアイダは、私費を投じて自ら調査を始めた。
疑わしいのは、ヘイルをしつこく付けまわしていたピンキーと呼ばれる若いチンピラヤクザだが、彼には鉄壁のアリバイがある。ところが、安食堂のウエイトレス、ローズは、アリバイの現場を目撃し、かすかな疑念を抱いていた。
ローズの口をふさぎたいピンキーは、計算づくで彼女をたらしこむ。若く貧しく孤独なローズは、手も無く愛の罠に落ち、心から彼を愛するようになるのだが…。


悪党と聖女の純愛。
この種の恋愛ものの原型となった小説ですが、よくある大衆小説のように簡単な話ではありません。

悪党のピンキーと純情可憐なローズ、一見正反対の二人は、この物語の世界の中では、一枚の紙の表と裏のように、きわめて似通った存在でもあります。
二人とも同じ貧民街で生まれ、愛を知らずに育ち、穴倉のような場所から陽の当たるブライトンにさまよい出てきた寄る辺ない子供。この共通点が、ピンキーのローズに対する嫌悪と共感のいりまじった複雑な感情や、ローズのピンキーに対する盲目的な信頼と忠誠を生み出しています。

汚れすさんだピンキーとて、まだ17歳の少年なのです。
この殺人さえ辞さない悪魔のような少年は、大人顔負けの狡猾さと、駄々っ子のように場当たり的な無鉄砲さをあわせ持ち、年長の仲間たちをリードする一方で、大人になることを怖れ、性的なものを嫌悪するという、奇妙に子供じみた潔癖さをもっています(したがって、ローズとの関係も、予想に反して非常にプラトニックなものです)。
彼の“悪”は、悪は悪でも、対立組織の親分であるコリオニなどとは全く違い、不遇な運命に対する子供らしい“怒り”に近い。事の起こりとなった犯罪だって、親代わりだったカイト親分のあだ討ち。彼自身にとっては、悪どころか至極正当な行為であるわけです。

この単純な幼い正義感は、そっくりそのまま、ピンキーをかばいぬくローズにも当てはまります。
彼らは背中合わせにぴったりとくっついて、コリオニやアイダの「大人の論理」に立ち向かう。正義の味方のアイダですら、彼らにとってはかたき役です。
世間的な欲も得も無く、ただ自分自身の魂だけに従って行動する純粋さ、危うさ、そしてもろさが、ローズはもとより、憎まれ役のピンキーに対しても、つい感情移入してしまう理由でしょう。
しかし、ピンキーの犯した罪は、新たな罪を呼び込み、彼らは次第に追い詰められてしまう。

原罪、救済、復活。
およそ神様とはかけ離れた、悪と罪の織りなすサスペンスフルな伏線の上に、(最後の最後で)グリーンらしい宗教的なテーマが展開します。

“ブライトン・ロック”とは、ブライトン名物の棒飴のことだそうで、この“子供のお菓子”が随所に印象的な小物として使われます。甘いだけではない凶器(なめてんじゃねえよ)。
地の文では、終始名無しの<少年>である“ピンキー”は、若さが陥りがちな危険と過ちの普遍的な表現なのでしょう。


 
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読むマンガ

2006/09/03(日) 13:22:33



これは文藝春秋のウッドハウスシリーズです。どのくらい続くのかわかりませんが、今のところ二冊出ています。ちなみにもう一冊はジーヴスものではないようです。

国書刊行会との最大の違いは、ハードカバーであること。断然重たい。携行用としては、あまりお勧めできません。
当然翻訳者も違います。読んだ感じでは、こちらのほうが原文により忠実かなという気がしますが、軽妙さという点では国書刊行会の森村訳がまさっています。原文も大事ですが、モノがモノだけに、文章のリズムは大切にしたいところです。
編集方針も、文春のほうが少々物堅く、翻訳選集刊行に寄せられた“ウッドハウス協会”(そんな組織まであるんだ!)からの序文や、先にあげたウォーや吉田健一先生のウッドハウス讃なども収録されていて、研究的な?興味に応えてくれます。
軽いお笑い小説なんだから、そんなに気張らなくても…とも思いますが、まあ好きずきですね。

バーティー&ジーヴスシリーズの短編集で、初期のものから集めたようです。

ジーヴズの初仕事:国書刊行会「それゆけ、ジーヴス」にも収録されていました。ジーヴズが初めてウースター家に現れたときのお話。

ジーヴズの春: ジーヴズって何歳くらいなのでしょうか。独身であることは間違いありませんが、何となく、バーティーよりはかなり年長のように想像していました。しかし、この話では、女性関係にも強いところを見せています。デートもするようです。謎です。
失恋デパート男だった、独身時代のビンゴが登場。彼の身分違いの恋を叔父さんに認めさせるため、ジーヴズの考案で、ロージー・M・バンクス著のベタベタなシンデレラ小説(ハーレクインロマンスみたいなものでしょう)を利用した、手の込んだ策に打って出るのですが…。オチが秀逸。

ロヴィルの怪事件: フランス滞在中のアガサ叔母(刊行会では伯母。彼女の親以上に高圧的な態度は、伯母のほうがふさわしいような気もするのですが)から呼び出しをくらったバーティー。お気に入りのカマーバンドとジーヴズを伴って、おそるおそる出頭したところ、果たして叔母の用件とは、牧師の妹との見合い話だった。叔母さんも相手も大乗り気で、話はバーティーを無視してどんどん進んでしまう。しかし、どう考えてもノリも反りも全く合わないこの縁談、なんとか逃れるすべはないものか。ところがその矢先、タイトル通りにホテルで大事件が起こり、事態は意外な方向へ…。

ジーヴズとグロソップ一家: ふたたびビンゴ・リトル登場。今度の“運命の”恋のお相手は、郊外の屋敷で暮らすホノーリア・グロソップ嬢。彼女のハートを射止めるため、ビンゴは健気にも弟オズワルドの家庭教師を買って出た。ホノーリア嬢自身が強烈な個性の持ち主である上に、オズワルドも根性の悪いクソガキで、見通しは暗い。しかし実は、ビンゴの恋の成り行きは、バーティー自身の将来にも大いに関係するのだ。
ここはどうしても一肌脱がねば…と思ったが、バーティーの外付けHDD・ジーヴズは、折悪しく休暇中。もたもたしているうちに、関係者の数が増えてゆき、状況は大混乱に。

ジーヴズと駆け出し俳優: アガサ叔母さんの怒りから逃れてニューヨークにやってきたバーティーのもとに、当の叔母からの紹介状を持ったシリルがやってきた。彼をうまくもてなせば、叔母さんも機嫌を直してくれるかも? しかし、シリルは到着早々トラブルに巻き込まれてしまう。

同志ビンゴ: ビンゴ・リトルの今度の恋は、相手もあろうに活動家の娘だった。待て待て、新興貴族の叔父さんの相続人であるお前が、どうして共産主義者の婿になんかなれる? だがビンゴの決意は固く、巻き込まれたバーティーも危うく洗脳されそうになる。

トゥイング騒動記: 失恋の痛手をいやすため、都会を離れたビンゴは、トゥイング・ホールに引っ込み、バーティーも同地に避暑に赴く。そこへバーティーの双子の従兄弟、ゴキゲンなクロード&ユースタスのコンビが合流、馬鹿げた賭博ゲームを開催して、ドタバタの大騒ぎに。

クロードとユースタスの出帆遅延: 何かというと騒ぎを起す双子に業を煮やしたアガサ叔母さんは、彼らの母親であるエミリーの懇願にも耳を貸さず、二人を南アフリカの会社に就職させてしまうことにした。だが、出国までのお守り役を仰せつかったバーティーの不安は的中。二人は壮行会で飲みすぎて、あっさり翌日の汽車に乗り遅れてしまったのだ。

ビンゴと今度の娘: ビンゴが可愛いウェートレスに惚れ込んだ。またか。だけど、今度の相手はちょっと様子が違う。ただのかわい子ちゃんじゃない。こんなに知性も教養もある、品のいいしっかりした娘が、どうしてウェートレスなんてやってるんだ? バーティーの疑問も当然、彼女には秘密があった。その驚くべき正体とは! 回りまわって、気の毒なバーティーにとんでもない累が及びます。

バーティー君の変心: これも「それゆけ、ジーヴス」と共通です。

ジーヴズと白鳥の湖: アガサ叔母さんの屋敷に一月近く滞在することになり、意気消沈するバーティーのもとに、差出人不明・意味不明の謎の電報が届いた。首をかしげながら屋敷に到着したバーティーの前に現れたのは、甘い新婚生活中のはずのビンゴ。なぜこいつがここに? ますます混乱するバーティーに追い討ちをかけるようにビンゴは、自分とは赤の他人、初対面のフリをしろと言う…。

ジーヴズと降誕祭気分: 魅力的な美人のレイディ・ウィッカムからクリスマスに招待されたバーティーは、ふらふらとなって、ジーヴズの冷たい視線にもめげず、楽しみにしていたモンテ・カルロ行きをキャンセルし、急遽スケルディングスに向かうことにした。ところが、出発直前にアガサ叔母から不吉な電話が。なんと、先方には因縁のサー・ロデリック・グロソップも来ているというのだ。楽しかるべき降誕祭に、早くも暗雲がたれこめはじめた。

ガッシー救出作戦: ジーヴズがキャラとして確立する以前の、バーティーを主人公とするドタバタ短編。ジーヴズは完全なチョイ役、バーティーも姓が違うし、アガサ叔母さんを除き、後のシリーズとの関連はほとんどありません。ガッシーは、シリーズで登場する同名の友人とは別人で、ここではバーティーの従兄になっています。
往年のハリウッド喜劇映画のような味わいの、一話完結ものです。

 
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